この作者自身がすごく好きになる

【俵＆吉澤選】　前線と窓口のことを呼ぶ上司（戦士になった覚えはないが）

俵　　一首目は、名古屋市の市嘱託職員、枝豆みどりさん。

吉澤　私もこの歌を最終選考まで残しました。

俵　いきなり審美眼が一致して、うれしいですね。この歌、肩の力がぬけてて好きです。上司はきっと悪気なく「君たちが前線だ、頑張ってくれたまえ」なんて激励しているんでしょう。それに対する心の声が、カッコの中のつぶやき。カッコ使いが上手いです。

吉澤　語感の良さもかっこいいですよね。窓口業務がどれほどバタバタかも分かる。この作者自身がすごく好きになりました。

俵　もう一つ感じたのは、「前線」という言葉を私たちは普段からよく使いますけど、本来の意味をすっかり忘れているなと。もともとは戦争の言葉なんですよね。そのことをこの歌が改めて思い出させてくれました。