最初のうちは、トラブルも日常茶飯事。私の外出中にカップルのお客さんが来店されたとき、和夫はお冷やとおしぼりだけ出すといたたまれない気持ちになったのでしょう。店の外に出て、私が帰ってくる方向を心細げに眺めながら立っていたのです。

またある日のランチタイム。和夫がテーブル席の3人の青年にスープを運んだところ、お皿をドンッと置いたのでスープがこぼれてしまいました。私が慌ててフロアに出て謝りながら拭いたのですが、お客さんは「お前がしたんやないか。お前が謝れ!」と激高。和夫は私の後ろで「ごめんなさい」と頭を下げました。

その後、食事をしながらその青年は店内でもたもたと働く「和ちゃん」の様子を見ていたのでしょう。支払いのとき、「僕、気がつきませんで、すみませんでした」とひと言。私はしみじみと、和夫と同年代の人たちが受けた教育のありがたさを感じました。

なぜなら、その数日前、和夫がお客さんに「ありがとうございましたぁ」と言ったとき、年配の男性に「ありがとうと言っとけば商売できると思うとるんかいな!この店は子どもをダシに商売しとるんか」と捨て台詞を吐かれたことがあったのです。私は「そうなんですよ、おかげでいいダシ出てるんです!」と答え、スッキリしたのを覚えています。

地域の交番のお巡りさんとはすっかり顔見知りに。ある日、信号待ちをしていた和夫は、通りすがりの人に自転車のマナーを注意されてパニックを起こし、自分を叩きながらワァ~ッと喚いたそうです。その様子を見たコンビニの店員さんが110番したので、パトカー2台にお巡りさん5人が来たことがありました。

そんなことがあるかと思えば、地元の人が「和ちゃん、駐車場でメロンパン食べてたよ」とか、「国道の柵に腰かけて車を見てた」と教えてくれたり、スーパーの店員さんがお釣りを届けてくれたりも。地域の人たちに支えられているような嬉しいことが数多くありました。