ある朝、仕事に行く車の中で私が、「和ちゃん、コロナでお客さんが少なくなっているから、先に休んでもいいよ。忙しくないからママだけでもいいくらいかな」と話すと、「やめるのは2人でがいい!」「一緒に始めたから、一緒がいい。シャッターが重い。油汚れが溜まっちゃう!一緒がいい」と答えたのです。

和夫の言葉を聞き、2人とも元気なうちに閉めるのがいいかなと、決めました。店に着くまでの15分、溢れてくる涙が止まりませんでした。「一緒にやめよう。よくやったね、和ちゃん!」。

2022年11月にお店を閉めたあとは穏やかな生活を送っています。和夫はサイクリングが好きなので、昔住んでいた町まで走りに出かけることも。お店では洗い物担当だったので、食後の皿洗いは和夫の役目。毎日1000円のお駄賃をとられます。

嬉しいことも腹の立つことも感激して泣くことも、どれもお店をしていたおかげかもしれません。和夫と一緒にやろうと思った原動力は、昔、どこかの園長先生が障害児の子育てについて書いた、「何でも200回は言うつもりでやってみてください。大概のことはしつけられるものです」という文章です。

愛情を持って覚悟を決め、やり続けてきたことが、今しみじみと感じる喜びに繋がっている気がします。


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