大学職員は、なぜこんなに危機感がないのか?
倉部 大学職員の良い面ということでもう一つ加えたいのは、やっぱり世の中の役に立っているという実感がものすごくあること。大学職員あるあるの一つに台車を押すという業務があるのですが、そんな瞬間にも、「これは大事な大事な学生さんのためにも運ばれるものなんだ」と思うと、楽しかったですよね。
……ただ、僕が大学職員だった当時、抱えていた憂鬱をたとえるとするなら、ドラクエのイメージなんです。最初はスライムを倒しに行くじゃないですか。まずは弱い奴を倒して、経験値が増えたら少しずつ強い敵に挑むわけですよ。ああいうRPGって次第にすごい敵を倒せるようになって、自分自身のレベルが成長することが楽しいわけです。
ところが、このまま大学業界にいたら、10年後もスライムとしか戦わせてくれないんじゃないか……と僕は不安になったんですね。それで二度目の転職で、予備校業界に移りました。
良くも悪くも、じっくりゆっくり着実にっていうのが大学組織なので、これが生き急いでるタイプの若者からすると、ストレスや不安につながりやすいのだと思います。僕は完全にそういうタイプでしたが、同じようにいま悩んでいる大学職員さんが多いみたいなんですね。
昔だったら、「いま我慢して、君が決定権を持つ年代になるまで頑張れ」という励ましには一定の効果があったかもしれません。しかし、いま果たして待っていられるかというと、難しいように思います。中途で入った人が上司になって、自分はもしかしたら課長になれないのではないかという、新しいタイプの不安を抱えている方も多い。
あんじゅ 頑張っても頑張らなくても、給料が変わらないじゃないですか。「数字をあげられなかったら、お前ら給料なくなるぞ」みたいのは、大学では聞いたことがありません。それ、漫画で見るやつだけど、本当にあるの? という感じです。
倉部 今年になって恵泉女学園大学や神戸海星女子学院大学が、来年度以降の学生の募集停止を発表しました。「募集停止」って業界用語ですが、事実上、何年後かには廃校になってしまうという意味です。着々と少子化の影響が広がっています。
昨年生まれた赤ちゃんが80万人弱で、今の18歳人口が110万人ほどですから、今から20年後には30万人近く減ってしまうわけです。さすがにそろそろ危機感が出てくるのかなと思うのですけれども……うちは大丈夫でしょうみたいな雰囲気が根強い。
「巨大客船の一船員である私が頑張ったところで、どうせ変わらないしな」みたい気持ちになりやすいのでしょうかね。できるだけ危機感を持った人にこの業界に残っていただきたいですし、長く活躍してほしいのですが、周りがどうしても変わらない時は、せめてあなた一人だけでも小舟で脱出する準備をすることも大事じゃないか……正直なところ、そうも思ってしまいます。
あんじゅ 副業を解禁してほしいですよね。それが時代の潮流ですし。たとえば、デザインのソフトって教職員だと格安で買えるのですが、動画編集とかバナー制作とか、副業できそうな人はたくさんいそうです。他の業界で仕事をすることで、技術がつくかもしれませんし。