その後、兄は離婚。母は施設に入所したが、ほどなくして他界した。「母が不憫で」と石川さんは肩を落とす。「私、もう何日も食事をしていないの」と言っていた母の声が頭から離れないのだと言って涙ぐんだ。
「兄が現状を打ち明けてくれていたら、私は母を引き取っていました。そもそも兄が再婚さえしなければ、母は幸せな老後を送れたんですよね」
10年が経過した今も、石川さんの中にはやりきれない思いが渦巻いている。
離婚した夫の再婚相手に遭遇
「元夫」という家族の再婚に翻弄された、佐々木綾香さん(45歳・会社員)のようなケースもある。
佐々木さんは30歳で職場結婚。寿退社して専業主婦になった。新居には職場の仲間も頻繁に遊びに来て、幸せな毎日を送っていたという。
そんなある日、新卒で入社したという女性が仲間に連れられてやってきた。佐々木さんは彼女も歓迎したという。のちに自分から夫を奪う女性だとは露知らず……。
「二人がいつから不倫関係になったのかは定かではありません。ある晩、唐突に『彼女を妊娠させてしまった』と告白されたんです。彼は『軽い気持ちだった。許してほしい』と泣いていましたが、泣かれてもねぇ」
どうにも気持ちが収まらず、件の仲間の一人に相談したところ、社内では周知のことだったと知らされる。愕然とし、何もかもが嫌になった佐々木さんは自ら離婚を言い渡し、元夫は彼女と再婚した。
「彼が悪いんですよ。でもそれは今だから言えることで、当時はあの女さえ現れなければという気持ちが強くて、憎しみを抱いていました」
自分がこうして泣き暮らしているあいだに、二人は新婚生活を始め、子どもを産んで楽しくやっているのかと思うと悔しくて眠れない夜もあった、と振り返る。