写真提供=読売新聞社

さらなる進化を遂げて

世界選手権で約4ヵ月ぶりにリンクに立った羽生の体を見て、違和感に襲われた。目に見えてたくましくなった筋肉に驚いた。そして、かなり追い込んだトレーニングを積んできたのだろうと察した。

「ジャンプはタイミングで跳べる。余計な筋力はいらないし、つけたくない」と話していたのが、懐かしい。きゃしゃでひ弱な少年は、もういない。男子は4回転ジャンプを跳ばないと、勝負にならない時代がやってきた。筋肉が必要だと考えを改めた。筋力トレーニングを本格的に取り入れ、肉体改造に着手していたのだ。

試合後は、「もっと大きく跳ばないと、もっと力強く思い切って跳ばないといけない、というふうに変われた。前よりうまくなったんじゃないかなと思います」と手応えを語った。王者になってなお歩みを止めない。尽きぬ向上心がある限り、進化を遂げる余地はまだまだある。

来季へ向けて、「勝つために、(4回転)アクセルも頑張る。ルッツも、フリップも頑張る」とファンの前で公言した。

10代の頃と違うのは、体だ。今の羽生にとって、ある意味けがが最大の敵と言える。氷上練習も試合も、以前のように数をこなすのは無理だ。事前にできる限りの準備をして、いかに氷上で効率のいいパフォーマンスをするかが、テーマになる。銀盤で滑れる時間に限りがあることを、誰よりも自覚している。内なる敵と最大のライバルが待っている。世界王者に返り咲くための厳しい闘いが始まっている。

 

※2019年「オータムクラシックインターナショナル」の記事は、『婦人公論』10月8日発売号(10月22日号)に掲載します。田中宣明氏による美麗な写真もたっぷり。お楽しみに!


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『夢を生きる』

ソチオリンピックで世界の頂点に立った後、自身のもつ世界最高得点を幾度も更新し、理想の演技を究め続けた2015-18年。その成長の軌跡を本人が語り尽くす最新インタビュー集。カラー写真を多数掲載