さらなる進化を遂げて
世界選手権で約4ヵ月ぶりにリンクに立った羽生の体を見て、違和感に襲われた。目に見えてたくましくなった筋肉に驚いた。そして、かなり追い込んだトレーニングを積んできたのだろうと察した。
「ジャンプはタイミングで跳べる。余計な筋力はいらないし、つけたくない」と話していたのが、懐かしい。きゃしゃでひ弱な少年は、もういない。男子は4回転ジャンプを跳ばないと、勝負にならない時代がやってきた。筋肉が必要だと考えを改めた。筋力トレーニングを本格的に取り入れ、肉体改造に着手していたのだ。
試合後は、「もっと大きく跳ばないと、もっと力強く思い切って跳ばないといけない、というふうに変われた。前よりうまくなったんじゃないかなと思います」と手応えを語った。王者になってなお歩みを止めない。尽きぬ向上心がある限り、進化を遂げる余地はまだまだある。
来季へ向けて、「勝つために、(4回転)アクセルも頑張る。ルッツも、フリップも頑張る」とファンの前で公言した。
10代の頃と違うのは、体だ。今の羽生にとって、ある意味けがが最大の敵と言える。氷上練習も試合も、以前のように数をこなすのは無理だ。事前にできる限りの準備をして、いかに氷上で効率のいいパフォーマンスをするかが、テーマになる。銀盤で滑れる時間に限りがあることを、誰よりも自覚している。内なる敵と最大のライバルが待っている。世界王者に返り咲くための厳しい闘いが始まっている。