40年前のトラウマは消えず……

老い先短いので、大事にとってあったモノも思いきって整理しています。でも、ちり紙だけは別。昭和40年代のオイルショックの時、軒並み売り切れでパニックになった体験が強烈で、今も納戸にぎっしり予備が入っていないと安心できません。

でもよく見たら、一番奥に、なんとあの時並んで買ったちり紙が数個残っているんです! 娘も呆れてるけど、いつまた役に立つかわからないでしょう?
(87歳・無職)

 

親戚の形見が重過ぎる

「ぜひあなたに使ってほしい」と、親戚から足踏みミシンを譲られました。戦前に親戚が奮発して購入した舶来品ですが、修理しないと使えません。処分したいのはやまやまだけど、80代の叔母がたまにうちに来て、ミシンが置いてある部屋を覗いては思い出を語るのです。「母が素敵なワンピースを縫ってくれてね」と。

家族の記憶が染み込んだ骨董品は、私には荷が重過ぎて困っています。
(60歳・主婦)

 

表に出せない秘密があるから

30代のとき、真剣に結婚を考えた相手は既婚者でした。人目の多い街中を避けて郊外の公園やひなびた観光地へよくドライブに出かけ、彼は行く先々で私の写真を撮ってくれました。

たくさんある写真は、すべて大切にしまってあります。中には「奇跡の1枚」と呼びたいほどキレイに撮れた写真もあり、いつでも眺められるよう、取り出しやすいひきだしに入れてあるんです。

彼は「子どもが高校を卒業したら離婚するから、それまで待って」と言っていたけれど、実現する前に病気で亡くなり、気がつけば私は天涯孤独のおばあちゃん。そろそろ終の棲家を決めなくちゃと、先日、有料老人ホームの見学に行きました。

でも、広いとはいえない居室にタンスとロッカーが一つずつ。必要最低限のモノしか置けません。彼が残してくれた溢れるほどの思い出を少しでも捨てるなんて考えられないから、不自由をしても自宅で最期を迎えようと思っています。
(72歳・無職)