「大切なのは、相続人が《納得した》と思える遺言書」(司法書士)
遺産をめぐって故人の思いと遺族の気持ちにギャップが生じ、きょうだいや親戚関係が修復不可能に……というケースは本当に多い。
トラブルを回避するには遺言書作成が必須ですが、「遺すお金がないから遺言書は必要ない」などと考える人はまだいらっしゃるようです。その結果、意図せず遺族が争う原因を作ってしまうことをご存じないのかもしれませんね。
実は、金融資産がなく、遺産は不動産だけというのが非常に揉めやすいパターン。相続人の一人が故人と同居していた場合、住宅を売ってほかの相続人と分ける必要が出てくるため、住む場所を失うことも珍しくないのです。
また、残念なことに、遺言書を作っていても揉めてしまうことが。商売を継いでもらうため、不動産や自社の株式などを長男に譲るという遺言書を父親が遺したところ、不満をもった弟妹が遺留分を渡すよう主張し、泥沼裁判へと発展。
このケースのように、「相続内容に偏りがある」「納得できる理由が書かれていない」ことが要因になってしまうことがあります。
きょうだい間での介護負担の差もトラブルのもと。「通院に付き添った」「食事の世話をした」などは寄与分(寄与に応じ、多く財産を相続できる制度)がありますが、大きな金額は認められにくいため、不公平感が生まれやすいのです。
不要な争いを生まないためには、相続人が《納得した》と思える遺言書を作ること。
それには、プロの助言を得る、相続人の意見を聞く、故人の想いを付言事項として遺言書に一筆書き添えることをおすすめします。