最期まで自分らしく生ききるためにも、希望を形にして伝えておきたいものです。それは、残される人への優しさにもなるでしょう。
死の間際や死後に関わる現場で働く人が見聞きした事例には、《立つ鳥跡を濁さず》のヒントが隠れていました(構成=古川美穂 イラスト=おおの麻里)
「在宅か施設か、自分が納得した決断を」(高齢者施設職員)
終の棲家を考えておくことは、とても大切です。わかっていても先送りにしている人は、「子どもが面倒をみてくれるはず」などと、淡い期待を抱いているのかもしれませんね。
でも、そううまくいくとは限りません。子どもたちが介護で疲弊していくことは往々にしてあるもの。
訪問介護員を経て、有料老人ホームで働く私は、「在宅と高齢者施設それぞれの特性を知り、ご家族で話し合いながら、最後は自分が納得した決断をすること」が人生を悔いのないものにできると感じています。
というのも、施設に自らの意思で入った人は、ネガティブなことがあっても「仕方がない」と順応し、楽しく過ごしていらっしゃる。でも、「試しに2、3日入ってみたら」などと、家族に半ば騙されるかたちで連れてこられると、「帰りたい」コールが続いてしまうのです。
確かに施設は、自宅に比べると自由が少なく、生活空間も狭い。寮生活のようですが、食事や入浴などの生活面の心配はありませんし、具合が悪い時にもすぐに誰かがかけつけてくれるという安心感があると思います。
自宅は自分のペースで過ごせるものの、買い物や掃除、通院などの日常生活をこなすことが難しくなったら、家族や訪問サービスなどによるサポートが欠かせません。
そのため、プライベートな空間に他人が頻繁に出入りするようになることを理解しておく必要がありますね。
私は将来、施設に入ることを決めています。ですから、今後ほかの施設でも働いて、しっかり比較検討していこうと思っているんですよ。
いざという時のために、みなさんも事前に口コミなどで情報を集め、施設見学に行くことをおすすめします。
臭いが気にならないか、スタッフの感じはどうかをチェックしましょう。見た目のきれいさ、値段では、施設の良し悪しは判断できませんから。