余命が決まる前に考えておく

医学の進歩によって、回復の見込みがなく、何もしなければ亡くなってしまう状態であっても、可能な医療の選択(延命治療)が増えました。その分、自分で決めなければいけないことが増えたのです。

たとえば進行がんで余命宣告を受けた時、「これ以上苦しい治療は受けたくない。好きなものを食べ、家族とおだやかな時間を過ごしたい」と希望するのか。

あるいは、「一日でも長く生きたいから、つらくても最先端の抗がん剤治療を受けたい」と願うのか。自分はどうしたいのかを考えておかなくてはなりません。

「延命治療」とか「終末期医療」という言葉を聞くと、「自分にはまだまだ遠い話」と思う方が多いかもしれません。しかし、年齢を重ねれば基礎疾患のリスクは増えます。心筋梗塞や脳梗塞の発作で、ある日突然、生死を分ける事態になる可能性もある。

命が助かったとしても、意識のないまま寝たきりの状態が長期にわたって続くことも考えられるでしょう。ご本人の意思として、無理な延命治療を行わず、痛みや不快などを取り除きながら、自然な形で逝きたいという場合もあるのではないでしょうか。

このように、望まない治療を受けずに迎える最期を「尊厳死」と呼びます。しかし個人的には、「尊厳《生》」と言いたい。

延命をしないということは、生に執着しないということではありません。自分の最期の選択を決めておくことは、その時まで満足のいく生を全うすることに繋がる。だから早めに考えなくてはならないことなのです。