野球人口が減っている

野球人口はどんどん減っていて、その勢いは少子化のペースを上回っている。これは賢明な親世代、今の30代、40代が「自分の子どもに野球をやらせるのはどうなんだろう」と二の足を踏んでいる証ではないでしょうか。

野球は伝統的に監督の力が絶対なんですね。根性論がいまだに根強く息づいています。時代に合わない人材を、野球が大量に育成してしまっていることを、世の中の賢明な親は冷静に見ているのではないかと思うのです。

また中学校の部活動も、運動部への入部が大幅に減少しています。部活動は教室では学べないことをやる大きな場所。いい意味での上下関係、つまり年長者を敬う気持ちや、年下の面倒をよく見る心遣いなども体験できます。教室と教室以外の居場所を持つことも大切だと思います。

慶應義塾大学2年生の学生コーチ時代。指導スタッフと。一番右が森林さん(写真提供◎森林さん)

もちろんまだ高校野球の強豪校への進学を志す中学生は多いので、今すぐに高校野球の質が下がるわけではない。しかし、その土台となる野球人口のすそ野が減っていることは危惧すべきです。

慶應の選手たちは文武両道を実践しています。素質のある選手たちを預かることの責任は重い。その重みを感じて指導すれば、ただ監督の価値観を押し付けて、手っ取り早く「俺の言う通りしていれば甲子園に連れていってやる」なんて言えません。ちゃんと選手が主体的に自分の頭で考えて、自分のための野球をしないと楽しくないですからね。

それに教えることで、選手が自ら気付く機会を奪ってしまうかもしれません。それは選手の成長を邪魔することになってしまいますよね。

とはいえ何を言っても「慶應だからできるんでしょ?」と言われてしまうことも多いんですけどね。(笑)