身に付くのは自分で見つけた答え

森林監督の指導法の基本は「任せる、信じる、待つ、許す」だという。これはすべての指導者に必要で、子育てにも通じることだ。
高校野球では、勝利インタビューなどで「子どもたちがよくやってくれました」と口にする監督もいた。もちろん愛情こめての表現ではあろうが、高校生を子ども扱いし、指導者である自分は大人という意識のもとで、無意識に上下関係を発生させているのかもしれない。

「子どもたちに勝たせてやりたい」という監督さんは、多いです。でも、これ、自分が勝ちたいという場合もあるんですよね。選手たちは自分たちで考えて勝利をつかみに行くんです。勝つために今、自分が何をすべきか、どういう練習をすればいいか、ということを考えると、相談しにくることもあるし、仲間と話し合うこともできる。答えらしきものを先回りして教えればその場ではできるかもしれませんが、やはりきちんと身に付くのは自分で見つけた答えです。

高校野球は、毎年チームが再編されます。入学して引退まで2年半が勝負。だからといって、結果がほしい大人が、毎年手っ取り早く技術を教えこんでいくだけになると、選手は野球を通じて成長することができなくなります。ましてや、フェアではないプレイに目をつぶるような大人がいると、大切なスポーツマンシップさえ身に付かない。これではなんのために野球をやったのかわからなくなってしまう。

そういえば、今回の甲子園での対戦では、サイン盗みなどフェアではないことをするチームはなくて、どのチームともとても気持ちよく試合ができたのはとてもうれしかったです。

少し遠回りになるかもしれませんが、本人を信頼して、自分の頭で考えるのを待って、少々の失敗は許すという余裕を持ちたいと思っています。これは相手が小学生であっても同じ。任される喜び、信じてもらえる喜びは大人が思っているよりもずっと大きいんです。