能見さん「巨人戦は特に球場のボルテージが上がっていた」(写真:『#みんな大好き能見さんの美学(ポーカーフェイスの内側すべて明かします)』より)
ジャイアンツ打線から三振の山を築いて「巨人キラー」と呼ばれ、22年シーズンを最後に現役引退した能見篤史さん。引退試合では、代名詞の「世界一美しいワインドアップ」で三振を奪った姿に胸を熱くさせたファンの方も多くいらっしゃることでしょう。能見さんは阪神タイガース、オリックス・バファローズで選手、コーチとして18年間活躍し、現在は、野球評論家として活動中です。能見さんいわく「巨人戦は特に球場のボルテージが上がっていた」そうで――。

阿部慎之助から聞いた「巨人キラー能見」対策

僕は「巨人キラー」と呼ばれていました。

これは嫌じゃなかった。むしろ、ありがたいと思っていました。巨人打線は強力で、そこに強いと言われるのは、ピッチャーとして認めてもらえた証しですからね。

ただ、巨人戦ばかり投げるのはしんどかったです。13年は対巨人全カードに先発しました。

8試合に投げて3勝3敗。「キラー」としては物足りないかもしれませんが、あれだけぶつけられれば、どうしたって勝ったり負けたりします。投球回数は60回1/30でしたから、1試合平均7回以上投げていますし、防御率も2.83と悪くない。一応ゲームはつくっていたので勘弁してください。

同じ打者と何度も対戦するにあたっての特別な対策はありませんでした。ただ、向こうが僕を嫌がってくれるから、優位に立てていたのだと思います。

13年のWBC日本代表で一緒だった巨人・阿部慎之助さん(現・ヘッド兼バッテリーコーチ)が、こんな話をしてくれました。

「お前が先発のとき、いくらミーティングしてもずっと打てなかったから、一時期ミーティングがなくなった。低めを振るなと言っても振るんだから、いったん気分転換。対戦データを見て個人で対応してくれって」

素直にうれしかったですね。選手同士の評価はただでさえうれしいものですが、あの阿部さんの口から聞けたので、余計に。