入院先に見知らぬ男性が

美人で性格もよかった母ですが、50歳を過ぎたころ病気が見つかり、入退院を繰り返しました。余命いくばくもない頃、入院先に「かつて、母のことをずっと好きだったんだな」ということがありありとわかる男性が、バラを何十本も持って登場! タキシードを着たイケメン俳優がヘリコプターで登場するドリンク剤のCMさながらでした。どんないきさつがあり、どんな間柄だったのかはわかりませんが、母がタメ口で結構邪険に男性を扱っていたのには笑いました。

間もなくして母は亡くなり、葬儀にも男性は出席。香典返しなどのやり取りを経て、その後、私がたまに自分の作品を絵葉書にして送ると、そのたびにお礼として1万円を送ってくるのです。

きっと母への何かしらの代償行為なのでしょうが、とりあえずお小遣いだと思ってもらっています。(38歳・デザイナー)

 

夫からの贈りもの

長年の使用でゆがんでいた母の結婚指輪が、あるとき妙にキレイになっているのに気づきました。「修理したの?」と聞いた私に、「実は温泉宿で失くしてしまって、同じようなものを買ったのよ」と告白した母。「パパには秘密よ」と口止めされました。さらに母は、銀婚式の記念にと父からもらったダイヤのペンダントを、なんとまたもや紛失。これまた、こっそり似たようなものを買っていました。

母が78歳で亡くなったとき、父から「結婚指輪とペンダントを棺に入れるのは忍びないから、おまえにやる」と言われ、心がズキリ。母の秘密を知らないまま、父も亡くなりました。(62歳・主婦)

 

お堅い母の高校時代は

母のマリコは経理職一筋。曲がったことや非常識なことが嫌いで、私や弟がヤンチャをするとよく怒られたものです。

ところが、私が高校に入った頃、「そういえば古いアルバムにお母さんの高校の頃の写真がないね」という話になりました。すると母は気まずそうに、「実は」と過去の秘密を告白。なんと、母は高校時代、制服のスカートをくるぶしまで長くし、真っ赤な口紅にソバージュヘア、ぺたんこの学生カバンに父親の煙草「ピース」を拝借、というスケバンさながらの姿だったというのです! 私も弟もドン引き。いまだに想像すらできません。

言われてみれば、母の高校の友だちは派手な人が多く、母の旧友や親戚は私を見ると「マリコの子とは思えん!」と言うことも。いつ「更生」したのかわかりませんが、今も好む煙草の銘柄だけが、その時代の名残らしいです。(28歳・公務員)