GAFAM創業者にお気に入りのSF小説がある
政財界で活躍している著名人には、SF好きが多いと言われています。SFのよさとは、想像もつかない世界を追体験できることです。
それに加えて、「愛は不変」などといった「お約束」が意外とあるのも、SFを楽しむポイントかもしれません。壮大な世界観だからこそ、登場人物の心の動きには、読者の納得感が出るよう「定番」が求められるのでしょう。
GAFAMの創業者には全員、お気に入りのSF小説があるそうです。グーグルの創業者ラリー・ペイジとセルゲイ・ブリンは、『スノウ・クラッシュ』(ニール・スティーヴンスン、日暮雅通訳)を読んで、グーグルアースの開発に影響を受けたそうです。
1992年にアメリカで発表された『スノウ・クラッシュ』は、三次元の電脳仮想世界(メタヴァース)も舞台にしており、現在の「メタバース」ビジネスの礎(いしずえ)ともなったSF小説です。
作中のアメリカは、経済力が世界最低水準に落ち込み連邦政府が無力化、代わりに世界の資本家が各地に「フランチャイズ国家」を設立しており、人々は現実世界と、アヴァターを使って入るメタヴァースの世界を行き来している状況です。
作中に登場するソフトウェア「アース」は、あらゆる地理空間データなどを追跡するために開発されたもので、これが現在のグーグルアースとよく似ています。
他にも、社名をメタヴァース由来のメタに変更した、フェイスブック創業者のマーク・ザッカーバーグは、『エンダーのゲーム』(オースン・スコット・カード、田中一江訳)、『三体』(劉慈欣、立原透耶監修、大森望他訳)を愛読しているそうです。
アップル創業者のスティーヴ・ジョブズは、映画『2001年宇宙の旅』に影響を受けて音声アシスタントの「Siri(シリ)」を開発しています。
一方、音声アシスタント「Alexa(アレクサ)」を生み出したアマゾン創業者ジェフ・ベゾスもSFファンを公言しており、アレクサにはテレビドラマ・映画の『スタートレック』が影響しているとのこと。
また電子書籍「Kindle(キンドル)」は、『ダイヤモンド・エイジ』(ニール・スティーヴンスン、日暮雅通訳)に影響を受けたといいます。
そしてマイクロソフト創業者のビル・ゲイツは、『七人のイヴ』(ニール・スティーヴンスン、日暮雅通訳)を絶賛しているそうです。
私も中学生のころにSFに熱中しましたので、気持ちはよくわかります。当時はフレドリック・ブラウンのショートショートをよく読みました。また『スタートレック』のファンを指す「トレッキー」でもあります。
元アメリカ合衆国大統領のバラク・オバマや、台湾のデジタル担当大臣オードリー・タンもトレッキーだそうです。
SFを普段から読んだり見たりすることで、思考が柔軟になったり、想像力が豊かになったりするという効能はあると思います。