画像や文章、そしてコンピューター用のプログラムなど、さまざまなものを生成することができる「生成AI」。日常生活やビジネスの中でも徐々に登場するようになってきたのではないでしょうか。人工知能が発達した現代にこそ「想像力を鍛える」ことが重要だと語るのは、ジャーナリストの池上彰さん。池上さんいわく「先進各国の軍隊もSFで思考実験していた」そうで――。
先進各国の軍隊もSFで思考実験していた
SFは豊かな「想像力」の産物です。
そしてSFに携わる作家や編集者たちなどの思考法を、「SF思考」あるいは「SFプロトタイピング」としてフレームワーク化し、ビジネスに活用しようとする動きが広がっています。SFの持つ力で、産業の活性化やイノベーション創出を目指すというわけです。
SF思考を活用しているのは、ビジネスパーソンだけではありません。イギリスやアメリカ、カナダ、オーストラリア、フランスの各軍も、SF小説を使った思考実験を実施しています。
急速に発展する技術によって、未来がどうなるのか。それを想像するための、「フィクショナル・インテリジェンス(架空の諜報)」に対する需要が生まれているというのです。
イギリス国防省は、未来の戦争に関する短編小説の執筆をアメリカのふたりのSF作家に依頼し、2023年2月にその短編集を公表しました。
序章では、同省の首席科学顧問が「国防における洞察力を磨き、イノベーション(革新)をさらに刺激するために、SFの創造性とビジョンを生かす必要がある」と記しています。
SF作家は、イギリスの軍事史を徹底的に調べ、現役の軍人へのヒアリングに膨大な時間を費やしたそうです。そうして得た事実に基づき、感情に訴える物語を書き上げました。
特殊なコンタクトレンズで司令部の指示を読み、痛みを緩和するボディスーツを着た兵士の物語や、環境問題を背景として、化石燃料の生産を維持したい石油会社が傭兵を雇い、ナイジェリアの内紛に関与する物語などです。