想像力が「行動の原動力」
Tesla(テスラ)創業者で、Twitter(ツイッター)を買収したイーロン・マスクもSFファンで、テスラで完全な電気自動車を開発するにあたり、「自分は地球温暖化から、地球と人類を救う」という使命感で取り組んだといいます。
膨大なお金がかかりましたが、今やテスラは時価総額でトヨタを追い抜きました。トヨタはガソリンエンジンの性能が素晴らしい一方で、世界のEV化の流れを完全に見誤ってしまいました。
かつての電気自動車は、蓄電池(バッテリー)の性能が悪く、蓄電池が大きくなりすぎるという欠点がありました。
そこでトヨタは、ハイブリッド車や水素車などの開発に注力しましたが、その分電気自動車の開発競争ではおくれをとってしまい、今は懸命に追いつこうとしています。
現在はバッテリーの性能が向上したことで、電気自動車が実用化されてきています。電気自動車には日本車メーカーの高性能なガソリンエンジンの技術は不要で、バッテリーの品質さえよければいいわけです。どの国のどんなメーカーでも、ゼロから簡単に造ることができます。
トヨタの「カイゼン」は、結局どこまでいっても改善で、発明にはなりません。イーロン・マスクが、壮大なSF的使命感を持って、「想像力」を発揮したこと、EVに対する本気度が違っていたことが、現在のテスラとトヨタの差に影響してしまったと思います。
イーロン・マスクの例は、まさに想像力が「行動の原動力」になっている好例だと言えます。
ちなみにイーロン・マスクは大富豪になり一時は豪邸に住んでいましたが、現在は極小のプレハブ住宅に住んでいるといいます。将来、月か火星に住む計画のため、地球においては小さな家で十分だというのです。
さすが、航空宇宙メーカー「スペースX」の創業者として、「火星の植民地化を可能にする」という目標を掲げているだけあります。
※本稿は、『池上彰が大切にしている タテの想像力とヨコの想像力』(講談社)の一部を再編集したものです。
『池上彰が大切にしている タテの想像力とヨコの想像力』(著:池上彰/講談社)
「生成AIに負けない人材か」が問われる時代というだけでなく、想像力は、働き方、生き方を変える原動力。池上先生は、「タテの想像力」と「ヨコの想像力」とし、学校や職場で教えてくれない想像力の伸ばし方を具体的に伝えます。
パンデミックや戦争が私たちの前に立ちはだかっても、どうすれば世界はよくなるか想像することが突破口に! 現実社会をテキストに、想像力のリミッターの外し方を教えてもらいましょう。