大会は減ったけれど
家族の反応も変わった。走り始めた頃の私は、スポーツ貧血、疲労骨折、股関節やひざの痛みなどが続き、「運動をすると、かえって体を壊す」と心配された。練習に向かう時も、「そんな服着て電車に乗るのかよ」と、背中から尖った声が。オバサンが若い子にまじって必死に走るのが、みっともないと思っていたのかもしれない。
練習後は食事もそこそこに横になるわ、頻繁に治療院へ出かけるわ、大会前日はエネルギーチャージのため餅だうどんだと大騒ぎしているのを目の当たりにしたら、あきれるのも無理はない。
走る力がついて年代別の入賞が増えてきた頃から、運動に慣れていなかった私でも大会で通用するレベルに成長したのだとわかって、家族も認めてくれるようになった。今ではどんなに派手なウエアを着て出かけても、黙って送り出してくれる。
ところが数年前から、コロナによって、マラソン大会の開催中止が相次いだ。最近になって少しずつ大会が復活してきたが、出場までに1週間分の健康状態をチェックしてスマホのアプリに記入しなければいけなかったり、スタート直前とゴール直後にマスクをつけたりと、まだまだ元通りとは言えない。
ここ数年で公園内のランナーも顔ぶれがずいぶん変わった。目標となる大会がなくなってやめてしまった人も多いようだ。かわりに、ステイホームの影響で運動不足らしき体形の人が増えている。
ランニングはやり始めも楽しいが、続けるうちに徐々にわかってくる奥深さやおもしろさもあるのだ。だから、コツコツと練習を続けていけばじわりじわりと楽しくなっていくよ、と彼らに伝えたい。
私が走り始めた頃から毎年出場している大会に、マスターズ陸上というのがある。競技クラスが5歳刻みに分かれていて、なんと100歳以上でも参加できるのだ。雰囲気もアットホームで、初心者でも走れる。自分の母親くらいの人が真剣にゴールを目指しているのを見て、私は年齢を重ねることが怖くなくなり、むしろ楽しみにすらなった。
これからランニング人口が増えて、派手なウエア姿のオバサンがたくさん出てきてくれれば、私もそわそわせずにすみ、同士と走れてメデタシメデタシなんだけれどなあ。