母の介護をしなければならないわが身
カスミさん(39歳)一家は、カスミさんの実家で両親と同居中。結婚したばかりの妹は近くの賃貸マンションに住んでいた。
「昔から何となく感じていたのは、両親は私には厳しいけど妹には甘いということ。私の場合は、結婚だって同居が条件だったのに、妹には何でも自由にさせていましたから」
カスミさんが結婚するまでには一悶着あった。貧乏な男と結婚するなら、実家に同居して体の弱い母親を助けるくらいしろと言われたのだ。カスミさんの夫は小さな会社の営業職。安月給だからカスミさんの実家に同居するのは大賛成だったという。看護師の妹は、フリーの整体師と結婚していた。
「私もパートで仕事をしていたので、子どもが小さいうちは親との同居は助かりました。でも、下の子が生まれ、上の子が小学校に入るころになると実家が手狭になり、ストレスが溜まっていましたね。そのうえ、母が倒れて介護が必要になり、仕事も辞めることに」
そんなとき、妹夫婦が家を建てると聞いた。
「マンションじゃなくて一軒家なの? って驚きました。そんなに稼いでいるふうには見えなかったのに、いつのまにお金を貯めたんだろうって」
姉妹で競い合う習慣はなかったが、何となくうらやましい。それにひきかえ、口うるさい両親と同居しながら母の介護をしなければならないわが身がうらめしい。ついつい妹夫婦の経済事情を詮索してしまうカスミさん。
「妹を問い詰めると、頭金の800万円は親からもらったと白状したんです。親には『お姉ちゃんには内緒にしろ』と言われたらしいのですが、あんまりですよね」
ここから親子喧嘩が始まる。
「私だってこの家を出て自分たちの家を建てたい! って思うのは当然です。私にも頭金出してよって親に言ったら、『そんなお金はない』と言われた。夫にマンション買おうと言っても、『ごめん、ローン払えないよ』ですって」