(写真提供:Photo AC)
厚生労働省が実施した「令和5年 労働安全衛生調査(実態調査)」によると、過去1年間でメンタルヘルス不調により1カ月以上休業、または退職した労働者がいた事業所の割合は、13.5%だったそうです。会社を休むことにためらいを感じてしまう方もいるなか、産業医・心療内科医の薮野淳也先生は「今や休職は、めずらしいことではなくなっている」と話します。そこで今回は、薮野先生の著書『産業医が教える 会社の休み方』から「正しく、適切で、安全な」休み方を一部ご紹介します。(構成/橋口佐紀子)

働く人に体調不良はつきもの

私は都内の企業で産業医として働くとともに、ビジネスパーソン向けの内科・心療内科のクリニックを開業しています。どちらも、相談に来られる方のほとんどがメンタルヘルスの問題です。

産業医として関わっている企業は、従業員1000人以上の大企業から中小企業、スタートアップ企業まで、規模も業種もさまざまですが、いずれの企業でも、一定数の方からメンタル不調を背景に休職の相談があります

全事業所の1割以上で、ここ1年の間にメンタル不調が原因で連続1か月以上休職または退職した労働者がいた、という調査結果があります(令和5年「労働安全衛生調査」より)。この調査では、事業所の規模別にも結果を紹介しています。

さらには全労働者のうちメンタル不調で連続1か月以上休職した労働者の割合、メンタル不調で退職した労働者の割合も調べていて、次のような結果が出ています。

(従業員数:メンタル不調で休職・退職した労働者がいた事業所の割合/休職した労働者の割合/退職した労働者の割合)

・1000人以上:91.2% / 1.0% / 0.2%
・500~999人:86.2% / 1.2% / 0.3%
・300~499人:74.1% / 0.7% / 0.2%
・100~299人:55.3% / 0.6% / 0.2%
・50~99人:28.2% / 0.5% / 0.2%
・30~49人:16.0% / 0.4% / 0.3%
・10~29人:7.5% / 0.3% / 0.2%

500人以上では9割前後の事業所でメンタル不調による1か月以上の休職や退職の労働者がいるわけですから、従業員が多いほど、メンタル不調で休職・退職する人も出てくることが分かります。

そして、全労働者のうち、メンタル不調で1か月以上休職した人の割合は全体では0.6%、メンタル不調で退職した人の割合は0.2%です。合わせると0.8%なので、125人に1人です。

学校でいえば、クラスに1人はいないかもしれないけれど、1学年に1人以上は毎年いるよね、というイメージです。こうした結果は、産業医、主治医としての肌感覚とも合っています。