斉藤俊子さん(左)、中村絹子さん(右)(撮影:藤澤靖子)
年齢を重ねても無理のない範囲で収入を得られたら――。趣味や特技を活かせるものであればもっといい。そんな仕事に出合い、生き生きと過ごす人たちに話を聞いた(撮影:藤澤靖子)

2よりつづく

朝4時から作業開始

「高齢になっても地域の人と繋がれて、お小遣いも稼げる。仲間とお茶を飲んでお喋りしながら、楽しくものづくりをしています」と話すのは、中村絹子さん(95歳)と斉藤俊子さん(90歳)だ。

2人が通うのは、埼玉県さいたま市の住宅街にある「100歳まではたらけるものづくり工房『BABA lab さいたま工房』」。週に1度、40~90代の仲間とともに働いている。

「BABA lab」で作るのは、《孫育てグッズ》の「抱っこふとん」や、ギフトにぴったりな雑貨、認知症ケアに有効なニット製品「ケアマフ」などさまざま。

「私たちは主に『ちょうちょクリップ』という定番商品を制作しているのですが、中村さんは作業が早くて、私が1つ作る間に何個も完成させるんですよ」と斉藤さん。この日も中村さんは、話しながらあっという間に帽子の形の飾りを完成させていた。昔から手芸は得意だったそうだが、実に見事なお手並みだ。

設立は2011年の12月。中村さんの孫である代表の桑原静さんが、近所のパチンコ店に行くくらいしか外出しない中村さんを見て、「おばあちゃんの知恵と経験を活かせる場を作りたい」と思ったことがきっかけだった。

「最初は『抱っこふとん』の縫製を担当していたのですが、だんだんとおぼつかなくなって。完成品にアイロンをかけたりノベルティの小物を作ったりと、できることをするようになりました。

自宅でも朝4時に起きて朝食を食べる6時半まで、コツコツと作品を作っています。娘には『疲れるからほどほどに!』と注意されますが、本当はもっと作りたいんですよ(笑)。私が亡くなっても『これ、絹子おばあちゃんが作ったんだよね』と思い出してもらえたら嬉しいなと思って」と、笑顔を見せる。