像の姿は
東京の日本橋三越本店に行ってみたいと思ったのは、辻村深月さんの「思い出エレベーター」という短篇小説がきっかけだ。350年という歴史を持つ老舗百貨店・三越をめぐるちょっと不思議な物語。
1階のホールに飾られていると書かれていた「天女像」というのがまずは気になった。「天女」といえば、天の羽衣が思い浮かぶ。美しい羽衣を纏った自由の女神のようなブロンズ像をイメージする。しかし、《極彩色の存在感》なのだそうだ。
どんなものなのか気になって仕方がなく、スマホで「日本橋三越 天女像」と検索してみた。すると現れたのは「なんじゃこりゃ」な画像だった。
天女というより怪獣という感じ。全長は約11メートル! 「木造彫刻で昭和35年に完成」とあるから、私が生まれた時にはすでにあったのか。これはぜひとも実物を見てみたい。
しかも、天女の周りには大理石と赤い床材の階段が広がっているらしい。大理石のなかにはアンモナイトが入っていて、これを小学生が自由研究で探しにくる、とも。夏休みに山だの海だのに行かなくても、冷房の利いたデパートで自由研究ができるとは、何とも羨ましい話ではないか。
さらに、2階バルコニーにはパイプオルガンが。今も演奏されているようで、ぜひ聴いてみたい。
そしてもう一つ気になっているのは、「ライオン像」。同百貨店のシンボルだそうだ。見たことはないが、観光客が像を撫でて帰る、という話は聞いたことがあった。戦時中、金属不足の折に供出されても無事に戻ってきた、その幸運にあやかれるように、ということなのだろうか。
これもスマホで検索を……と思ったがやめにした。「正解」は知らないほうが楽しい。リアルなライオンだろうか。それとも意外に、狛犬みたいなかわいらしい感じだろうか。『ローマの休日』の「真実の口」みたいな顔をしているとか?
よし、決めた。今の仕事を退職して時間ができたら東京に行こう。スカイツリーや浅草寺はどうでもいい。日本橋の三越に行くのだ!