133の国と地域を旅して、625ヵ所もの世界遺産を訪れている写真家・富井義夫さん。40年以上にわたって世界中を巡ってきた富井さんによる、『婦人公論』での新連載「世界遺産を旅する」。第1回は、富井さんが世界遺産の撮影をライフワークとするきっかけとなった「アブ・シンベル大神殿(エジプト)」をご紹介します
朝日が差し込む始まりの地

エジプト
私は40年以上にわたり、世界遺産の撮影をライフワークとしています。初回は、この道を歩もうと決めたきっかけの地、アブ・シンベル大神殿をご紹介しましょう。
エジプトのカイロから南へ飛行機で2時間のところにある都市、アブ・シンベル。ナイル川の河畔に建つ神殿は、3000年前に、第19王朝の征服王・ラムセス2世の権威を示すため造られました。
外壁に鎮座するのは、岩山をくり抜いて造られた、高さ20メートル以上のファラオ像。廊下からラムセス2世の座像のある奥の至聖所へと、朝日が真っ直ぐに差し込むよう綿密に計算されて建てられています。