これまで2020本以上のドラマを作ってきたという、日本を代表するテレビプロデューサー・石井ふく子さん。98歳の今も、プロデュースする作品の現場に立ち会うそう。ドラマ作りへの思いと、健康管理について聞きました(構成:篠藤ゆり)
ドラマと舞台の両輪に助けられて
最近の若い人はあまりテレビを観ないようですし、今、テレビ業界は決して順調とはいえません。でも私の心の中には常に、家族で楽しめるいいドラマを作りたいという思いがあるんです。大袈裟かもしれませんが、四六時中、頭のどこかでドラマのことを考えている気がします。
ドラマを作る際、製作費をかけすぎないのも、私のモットーです。セットを組み、あとはちょっと外にロケに出るくらいにし、無駄遣いはしません。そのかわり、出演者にはきちっとお支払いしたいと考えています。
ドラマを手掛ける一方で、舞台の演出も180本以上やりました。父――母のつれあいで血は繋がっていないのですが――が新派の名優で、ある時、私に新派のための作品を考えてほしいと言ってきて。そこで、川口松太郎先生の小説を原作にした脚本を用意しました。
父と一緒に川口松太郎先生のお宅に脚本をお届けにあがると、先生が父に「誰が演出するんだい?」。すると父は、「これ」と言って、私に向かって顎をしゃくるんです。「小さい頃から新派の芝居を観てるんだからできるだろう」と。
「冗談じゃないッ! 観るのとやるのでは大違い」と拒否したものの、結局、強引に話を進められてしまいました。
でも振り返ると、本当にいい機会を与えてもらったと心から感謝しています。舞台は、直接お客様の反応がわかりますから、なるほど、こういうことが人の心に届き、心を動かすのだと気づくことができる。結果的にそれがドラマを作る際にも役立ったと思います。