家族の有無にかかわらず誰にでも生じるのが、死後の事務処理です。自分も周りも後悔しない最期を迎えるために、最低限備えておくべきこととは。長く現場に携わってきた専門家が疑問に答えます(構成:上田恵子 イラスト:はしもとゆか)
Q. 財産は少しの預金と自宅だけ。子どもたちの仲は良好なので、遺言書は用意しなくてもいいですか?
A. 家族がもめない方法で残しておくべき
よく、「財産が少ないので遺言書は必要ない」と言う人がいます。じつは、家庭裁判所で行われる遺産分割調停の約3割は、財産1000万円以下のケースです。仲のいいきょうだいでもお金が絡むともめることが多く、それぞれの配偶者まで口を出してくれば非常に厄介。遺言書はぜひ残しておきましょう。
一番安心なのは、「公正証書遺言」。財産額や配分内容に応じて所定の手数料がかかり、2名の証人も必要となりますが、公証役場で作成・保管されるため、確実に効力を発揮します。
仮に気が変わっても、後から内容の修正が可能。ただし、自動的に役場から相続人に「遺言書がある」と連絡が行くわけではないので、遺言書の存在を周囲に伝えておく必要があります。
公証役場での手続きが面倒な人には、「自筆証書遺言」という選択も。費用がかからず、思い立ったときに作成できます。
書き方には、「財産目録以外は手書き」「日付を明確に入れる」「署名と押印が必須」など細かなルールが。遺言が無効にならないよう、事前にきちんと調べて作成することが大切です。