133の国と地域を旅して、625ヵ所もの世界遺産を訪れている写真家・富井義夫さん。40年以上にわたって世界中を巡ってきた富井さんによる、『婦人公論』での新連載「世界遺産を旅する」。第6回は、「万里の長城」をご紹介します
人類史上最長の建造物

中華人民共和国
紀元前7世紀、春秋戦国時代にあった楚の国は、自国を守るために城壁を造り始めます。以来、燕、趙、秦などの国がそれに倣い、馬や人が乗り越えられない長城を築いていきました。
その壁を一つに繋いだのが、中華統一を成し遂げた秦の始皇帝。建設期間は2000年を超え、人類史上最長の建造物になったのです。司馬遷が、長さは「万余里」と『史記』に書いたことから、「万里の長城」と呼ばれるようになりました。
現存する長城以外にも、古文書を手掛かりにして、いまも新たな遺構の発見が続いています。
実は万里の長城の一部である金山嶺(きんざんれい)長城は、山の奥深くにあることから、1980年に発見されたもの。数百年間、人が立ち入らないままひっそりと存在していました。