概要

旬なニュースの当事者を招き、その核心に迫る報道番組「深層NEWS」。読売新聞のベテラン記者で、コメンテーターを務める飯塚恵子、伊藤俊行両編集委員が、番組では伝えきれなかったニュースの深層に迫る。

ロシアによるウクライナ侵略は5年目に入った。ウクライナは厳しい状況に置かれながら、ロシアの暴挙に屈せず抵抗している。この4年で国際秩序の揺らぎがあらわになった。日本もウクライナを支援しながら、人ごとではないと改めて受け止める必要がある。番組は5夜連続で、侵略4年の現実に迫った。出演した飯塚恵子、伊藤俊行両編集委員が語り合った。

ウクライナ4年のリアル

士気の高さと国民の覚悟

「相手の兵士の数や戦車の数は計ることができるが、兵士の士気の高さや国民の抵抗の意思の強さは測ることができない。ロシアは一番数値にしにくいところを見誤った」=小泉悠氏

「ゼレンスキー大統領の政権運営は、以前は揺れ動くところがあった。侵略を受けてから、国家としてやるべきことがシンプルになり、この4年変わることはなかった」=岡部芳彦氏

伊藤番組は、侵略から丸4年となる2月24日を挟んで、和平の行方や戦場の変化、そして戦時下で暮らすウクライナの人たちの思いを5夜連続で伝えました。右松健太キャスターと番組スタッフはウクライナに入り、1週間をかけてキーウや各地で取材を行い、現地から生中継も行いました。

番組は2022年2月の侵略当初から、ウクライナ問題に力を入れてきました。戦地は日本から遠く、侵略は長期化していますが、この4年、週に1回は「戦争のリアル」と題して、ウクライナが直面する課題を様々な角度から特集してきました。こうした番組作りは地上波では難しく、BSの特徴を生かした取り組みだと思います。これまで招いたゲストの方々からも、番組がウクライナを追い続けていることへの激励をいただいてきました。

ウクライナ侵攻から」4年
ウクライナ侵攻から4年©️日本テレビ

飯塚ウクライナ問題を忘れないという強い思いを、右松キャスター、私たちコメンテーター、番組スタッフの間で共有してきたことを誇らしく思います。この4年を振り返って一番感じることは、視聴者の皆さんの関心の高さです。侵略当初に限らず、今でもウクライナ問題を取り上げると視聴率は上がる傾向が見られます。

国連安全保障理事会の常任理事国であるロシアは、国際法を無視して力による現状変更を一方的に行い、核兵器を脅しの道具に使いました。「大国はそこまではやらないだろう」とこれまで思ってきましたが、プーチン大統領はその一線を越えました。

日本は2022年12月、安全保障関連3文書を改定して、防衛費を増額したり、いわゆる反撃能力を保有したりすることを決めました。戦後の安全保障政策を大きく転換したわけですが、世論の反発はそれほどありませんでした。力による一方的な現状変更は東アジアでも起こり得るという危機感を抱いたのだと思います。自国の安全と国際秩序を守るためには、日本はどう行動すればいいのか。ウクライナ問題への視聴者の関心が高い理由はそこにあると思いますし、日本の世論に与えた影響は大きいと考えています。

伊藤3日目のゲスト、小泉悠・東大先端科学技術研究センター准教授と岡部芳彦・神戸学院大教授がおっしゃったように、ウクライナの人たちは苦しくてもロシアに屈しないという思いを持ち続けています。番組は、戦時下の人々の暮らしも継続して取材してきました。右松キャスターは今回、「不屈の拠点」と呼ばれる臨時の避難所やロシア軍によって破壊された集合住宅や駅舎、負傷兵たちのリハビリセンターなどを実際に訪ねました。

一見淡々と暮らしているように見えても、戦争のある日常はやはり厳しいものでした。多くの人たちがインタビューに対して、「穏やかな時間がほしい」「安心して眠りたい」という、ささやかで切実な願いを口をそろえて話してくれました。この冬は大寒波で、4年で一番厳しかったといいます。息子が志願して前線で戦っているという母親は「ウクライナ人としては息子を誇りに思っているが、母親としては戦場に赴くことに反対している」と複雑な思いを明かしました。おととしオンラインで番組に出演してもらった、出征した夫を亡くした女性にも、右松キャスターは会いに行きました。大きな喪失を抱えながら、残された息子を必死に育てようとしていました。

ウクライナの人たちの感情まで引き裂くロシアの卑劣さを許すことはできません。侵略から4年がたち、疲弊する人々の思いに迷いが見られないわけではありませんが、取材した負傷兵たちは「リハビリが終われば、戦場に戻る」と言いました。こうした気概はロシア側にはなく、ウクライナ側に何か希望があるような気がします。