飼い始めてから見つかった病気
スーパーとドラッグストアに買い物に出かけ、右腕に1つ、左腕に2つ、肉にくいこむほど重いビニール袋を提げて帰る。なんとか玄関のドアを開けると、そこにはちぎれんばかりに尻尾を振り、私の帰宅を喜ぶ愛犬の姿。
夫や2人の子どもたちが、私が帰っても「おかえり」のひと言も言わなくなって、どれくらいになるだろう。家族で唯一、私の帰りを待ちわびてくれている犬の出迎えにしばし酔いしれた後、玄関からリビングへと続く廊下に散乱するモノたちが目に飛び込んでくる。
押すとブーブー鳴るゴム製のブタの人形、大きさの異なる4つのボール、歯形がついてボロボロになったフリスビー、骨の形をしたおもちゃ……。キッチンで使っている手拭きタオルまで落ちている。
「また、やっちゃったねー」とつぶやきながら、買ったものをリビングに運び込むと、私はもう一度玄関まで戻って、転がっているあれこれを一つずつ回収する。そして、おもちゃはおもちゃ箱へ、床に落ちていたタオルは洗濯機へ。これが、外出から戻ってからの私の習慣である。
愛犬は、5歳になるメスの秋田犬だ。名前は「もも」という。朝と夜の散歩のときにトイレを済ませる犬が多いが、生後4ヵ月で我が家にやってきたももは、いくら教えても散歩までトイレが我慢できず、家の中でおしっこをしてしまう問題児だった。「お手」や「お座り」「待て」などは数回教えればすんなり覚えたのに、トイレだけ覚えられないのはおかしい、と病院に連れて行ったところ、膀胱に病気が見つかった。お医者さんによると、病気のために、長い時間トイレを我慢できないようだ。
病気であれば、仕方がない。しかし、今のまま家の至るところで粗相をされては困る。かといって、まだ幼いももにオムツをつけっぱなしにするのもかわいそうだ。そこで、玄関とリビング、キッチンの隅に犬用のトイレシートを置き、シート以外の場所でトイレをしないように教えることにした。ももはたった2日で室内でのトイレのルールを覚え、私たちに快適な日々が戻ってきたはずだった。