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厄介の種はもともとあったのかもしれない。そこに新型コロナウイルス感染症の影響で、会うことのできない状況が、心配やトラブル、身内の問題をより面倒にする。家族の溝は深まるばかり。沢村さん(仮名)の場合、単身赴任の夫の様子が気になって……(取材・文=樋田敦子)

嫌がる母を説得して入ってもらった

親子、夫婦。離れていてもいなくてもそれなりに葛藤はあるものだが、高齢の壁が立ちはだかると、母娘の面倒なバトルに火がつくこともある。

東京にある貿易会社に勤める沢村和代さん(67歳)は、首都圏近郊にあるサービス付き高齢者向け住宅に92歳になる実母を入所させている。数年前に転倒して大腿骨を骨折し、その後、人工関節の手術を受けたため、ひとり暮らしは危険だと判断した。

「身の回りのことは一人で何でもでき、もともとアクティブな人なので、実家から近い施設なら友人も訪ねてきてくれるだろうと、嫌がる母を説得して入ってもらったのです。週に1回面会に行って、外食に連れ出したり、買い物をしたりと、それなりに楽しんでいたようでした」

ところがこのコロナ禍で、施設は面会禁止に。世の中が大変な状態になっていると頭ではわかっていても、「なぜ出かけてはいけないの」と母のイライラが募るのだという。

感染が拡大する前、編集者の友人から「俳句をずっとやってきたお母さんのために、句集をまとめてあげたらどうか」と提案があった。「何か集中できることがあるほうが脳の活性化に役立つ」と沢村さんも考え、自費出版を打診すると母は「費用などが大丈夫ならやりたい」と言う。