言った、言わない、の応酬で
2人のバトルを見かねて介護士さんが来たこともあるという。そこで考えたのが、手紙や携帯メールを使ってのやり取り。手紙には疑問点を書き、メールでは「何ページと何ページに同じ言葉があるけれど、こっちは平仮名で、こっちはカタカナ、どっちに統一する?」といった具合。2つ質問すると1つは忘れてしまうので、1つずつ書くようにしている。電話は「あなたの声は高いから、何を言っているのかわからない」と言われるので、ほとんど使わない。
「細かくやり取りし、何度も念押しするのに、こんなことは言っていない、この句は選んでいないと言うこともあるのです。句の順番を決めたのに、ひっくり返されたことも。言った、言わない、の応酬で疲れます。感情の起伏が激しくなってきて子ども返りというか、自己中心的で……」
1時間半車を飛ばして行っても、ほとんど会話にならずに終わり、帰りはぐったりして泣きそうになる。それでも沢村さんは毎週通う。
句集作りは最終段階に入った。80部刷って、40部を母親の手元に届ける予定だ。
「完成するまで、きっとバトルも、このイライラも続くでしょうが、仕方ありません。実の母と娘は、遠慮もないし、こんなものだとあきらめています」
家族とすぐに会えない状況でも、せめて気持ちや言葉を伝えたい。なかなか伝わらず返事をもらえないもどかしさや、イライラを鎮めながら、うまくやっていくしかない。