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厄介の種はもともとあったのかもしれない。そこに新型コロナウイルス感染症の影響で、会うことのできない状況が、心配やトラブル、身内の問題をより面倒にする。家族の溝は深まるばかり。小林さん(仮名)の場合、大学生の息子の家賃に頭を悩ませていて……(取材・文=樋田敦子)

引っ越し当日、設置したテレビをつけると

関西地方に住む会社員の小林聡子さん(54歳)は、東京の国立大学で対面授業が始まる長男(19歳)を9月に送り出した。昨年末に推薦入試で大学合格が決定、2月に賃貸契約し、3月の半ばには引っ越しを済ませる段取りで動いていた。

引っ越し当日、親子3人で荷物を部屋に運び込み、設置したテレビをつけると、安倍首相(当時)の「直ちに緊急事態宣言を出すものではないが、特措法に基づき対処していく」という会見。「大変な事態になった」と家族で話した。

「そのときはまだ入学式も、授業も行われる予定で、早いうちに引っ越しを済ませておこうと思っていました。東京出張の多い私も泊まれるようにと借りた家賃約10万円のアパートは、すでに息子が一人で生活できる状態でした」

その後、入学式は中止、授業もオンラインになることが決定。いったんは関西に帰ることを小林さんが提案すると、長男は頑として「帰りたくない」と主張した。あこがれのひとり暮らしがすぐそこにあるのに、なぜ帰らなければならないのか。「春休みのうちに東京近辺で行っておきたい場所もあるので、自分は残る」という息子。