いざ老後が目の前に迫ってきてから、雀の涙ほどの貯蓄に驚愕。老後資金も年金では賄えないとの報道もある。「投資でもして、お金を増やさなくては」と思い立った、主婦投資家の3人。その戦績はいかに?

“無鉄砲主婦”が50万円で学んだこと

損をするのが怖くて、ずっと投資を避けてきたという人も多いだろう。女性が40代、50代で資産運用を始める動機とは何なのだろうか。

専業主婦の優子さん(55歳)は、ひとり息子が中学へ進学して手が離れた5年前、家事・育児以外の何かに挑戦したいと思うようになった。そんなとき、夫がポツリと漏らした「世間は、アベノミクスで盛り上がっているなぁ。投資でもしてみようか」という言葉に、「それ、私もやってみたい!」と飛びついたという。

「夫婦ともに投資の初心者。元本が保証される債券ばかりを手堅く購入する夫を横目に、私は最初からイケイケでした。株式の意味すらあやふやな経済音痴のくせに、渋る夫に頭を下げ、わが家の貯蓄から30万円を資金として、株に投資させてもらうことにしました。だって株のほうが、上がったり下がったり、ゲームみたいで楽しそうだから」

もともと無鉄砲なところがある優子さんは、早速インターネットで投資家のブログを覗き、必ず利益が出ると絶賛されていたバイオ株を購入する。ところが約1ヵ月後、株価が大暴落。そのニュースを知ったのは、病院の待合室だった。

「息子が発熱して病院に連れてきていたのに、子どもそっちのけで、『下落よ、止まれ!止まって、お願い!』と冷や汗を流しながら念じるばかりでした」

帰宅し、慌てて売ったときには、約20万円の損失になっていた。落ち込んだ優子さんの頭には、「株はやめて、パートに出よう。それで損失を埋め合わせなきゃ」など、さまざまな思いが駆け巡ったという。

「でも、結果的に私が選んだのは、『株の借りは株で返す』ことでした。ボロ負けして終わるなんて、悔しすぎる。夫に事の顚末を正直に話し、株についてきちんと勉強することを条件に、20万円の追加資金をもらいました。手元に残った10万円と合わせて、30万円で再出発したんです」

その後は、図書館に通いつめ、投資の入門書を読み漁った。それまでは聞き流していた、経済に関する首相の発言にじっくり耳を傾け、新聞やネットニュースの経済欄にも目を通す。午前中に一度は値動きをチェック、株価チャートも覗くようになったとか。

「家族を送り出した後、9時に株式市場が開くと同時に株価をチェックして、午前のうちに食材の買い出しへ。帰ってきてからは本で勉強。夜は投資家のブログを見てまわる。するとだんだん、外食産業やスーパーなど生活に密着している企業の株が、主婦向きだとわかってきました。

たとえば、行きつけのスーパーの〈イオン〉は、100株以上持っていると、買い物額の数%がキャッシュバックされる、オーナーズカードがもらえる株主優待がある。戻ってきたお金を貯めて息子が欲しがっていたゲームを買うなど、家族みんなが喜んでくれます。夫の酒代節約のために、ビールの詰め合わせがもらえる〈サッポロビール〉の株も。主婦にはうれしいおまけですよね」