イラスト:若林夏
老後の不安に備えて、潔い倹約生活を続けている小笠原洋子さん。ケチを楽しむことで、心身ともにストレスから解放されていると言います(イラスト=若林夏)

小心者ゆえお金も健康も心配です

72歳のいまも、健康とお金のことは、常時頭の中にあります。私は公団の高齢者向け賃貸住宅に一人暮らしをしていますが、もし大病にかかったらいくら必要になるのか、などと不安を覚えます。

つましい年金暮らしは、かなりの厳しさを強いられますから、浪費は大敵。ストレスなどで心のバランスを失ったときにお金を使いがちなので、けっして浪費をしないために、1日1000円を上限とした節約生活を楽しむことを習慣にしてきました。

主な使い道は食費で、化粧品や雑貨などもここから出します。食が細いので、食べ切れない分は冷蔵・冷凍。その保存期間を考慮して、食材や惣菜の値引き品は買いません。買い物に行かない日の出費は0円。たとえば1500円使った日は、翌日の上限を500円に調整します。使わなかったお金は引き出しの奥に入れて、忘れた頃の発見を喜びとします。

こうした「ケチ道」を貫きながら、なるべく医療費を使わないよう、人生の最期までできるだけ健康でありたいと思っています。仏教で言う「生老病死」こそ人間の自然な姿と受けとめつつも、その苦をどう乗り越えればいいのか、それに備えるにはどうしたらいいのか――と、小心者ゆえいろいろと心配してしまいます。

健康とお金は切り離せない問題と捉えて、自分なりに心がけていることがあります。子どもの頃から身体が弱いこともあり、まずは、ふだんからお金がかからない健康維持法を実践。朝起きて寝るまでの規則正しい生活も、バランスのよい食事の配慮も、健康でありたいからこそ。運動のたぐいは苦手で一切できないので、ひたすら散歩。歩くだけです。

そして、私にとっては身体の問題と同じくらい、またはそれ以上に「心」や「気分」が健康に与える影響は大きいので、毎日自分を鼓舞しています。鼓舞するといっても、窓の景色を眺めながら食事を味わうとか、好きなアートの番組を見るとか、今日はどこを歩こうか考えるとか。

がんばっていろいろとケチった結果、病気になってしまったら本末転倒ですよね。そこで自分が食べたもののメモ書きなどを見て、偏りがないか確認して栄養バランスをとります。また「○○が身体にいい」という情報が入れば、とりあえずそれを明日のおかずにするため、買い物へ。お目当てが見つからなくても、そこでしょげたりはしません。目的があれば歩けるからです。私にとっては、「腹八分」と「歩くこと」が、心身の健康とお金の節約につながっていると実感しています。