時事問題から身のまわりのこと、『婦人公論』本誌記事への感想など、愛読者からのお手紙を紹介する「読者のひろば」。たくさんの記事が掲載される婦人公論のなかでも、人気の高いコーナーの一つです。今回ご紹介するのは50代の山本恵子さんからのお便り。子どもの頃から何かあると一喜一憂しがちな性格だったという山本さんですが、そんな時に唱える不思議な「おまじない言葉」があるそうで――。
母の苦肉の策は
私には、母から伝授された不思議な「おまじない言葉」があります。それは、「にもかかわらず」です。
子どもの頃から何かあると一喜一憂しがちな性格で、すぐ落ち込む私を見かねた母が、なんとか早くほかのことに目を向けさせようと思いついた苦肉の策だったようです。
先日、料理コンクールに参加した際、びっくりするくらい完成度の高いケーキができて自信満々だったのですが、見事に落選。「なんで銀賞すらとれなかったの? 材料も見栄えも工夫したのに」などと考えているうちに腹立たしくなり、どっと落ち込みました。
そこで早速、おまじない言葉「にもかかわらず」を連発。「落選したにもかかわらず、ダイエットも順調。落選したにもかかわらず、夫も猫も元気。落選したにもかかわらず、100円ショップの買い物は楽しい」と、思いつくままに口にしてみました。いまいちすっきりせず、ブツブツ言いながら考えているところに夫が帰宅したので、バトンタッチ。
夫は「落選したにもかかわらず、小豆アイスがうまい」と、アイスキャンディをかじり始めました。食べながら、「ケーキがコンクールで落選したにもかかわらず、和菓子もいい。豆大福食いたい」とか何とか。続けて私も「落選したにもかかわらず、ビールがうまい」などと言っているうちに、我ながらアホらしく思えてきて自然と笑ってしまいました。まあいっか、初めてのコンクールだったし、よしとしよう……。