「子育てと仕事に追われていた私の“恋愛スイッチ”は、長らく完全にオフ状態。彼と共に過ごす時間は心地良くて幸せだった。にもかかわらず、それが恋愛とは結びつかなかったのです。」(撮影:大河内禎)
2022年5月9日の『徹子の部屋』で、4歳、11歳、14歳のお子さんとの日々を語る山口もえさん。爆笑問題の田中裕二さんと出会ったときは、1歳半と6歳の子育て中。芸能人ならずとも難しそうな再婚までの道のり、山口さんの背中を押したのは、子どもたちの「家族になりたい」気持ちの強さだったそうです。『婦人公論』2016年3月8日号の田中裕二さんと再婚について語ったインタビューを再配信します。(構成=平林理恵)

恋愛スイッチは完全オフ。ママ業最優先の日々に

2015年10月、「爆笑問題」の田中裕二さんと結婚しました。以前からお付き合いをしていたのに、それを明かすわけにいかず、とても心苦しく思っていました。結婚の意思を固めたのはもうずいぶん前です。でも、万が一にでもこのお話がダメになった場合、子どもたちを傷つけてしまうと思うと、どうしてもお伝えすることができなかった。

それで、記者の方に質問されても、笑ってごまかしたり、煮え切らない態度を取ったり。それがようやくこうして晴れてお話しできるようになり、本当に嬉しいです。

きっかけは、東貴博さんと安めぐみさんの結婚披露宴でした。ずいぶん前にレギュラー番組を一緒にやっていた彼と、久し振りに再会したのです。そのとき、「最近どう? 元気?」と聞かれましたが、私は、離婚して1年たつかたたないかの頃で、毎日がいっぱいいっぱい。

それで、「子育てと仕事しかしていません。やさぐれてます」と答えたんです。そうしたら「ダメだよ、息抜きしなきゃ。何かおいしいものを食べに行こう」と誘ってくれて。「でも、子どもも一緒ですけど」「いいよ、いいよ、行こうよ」みたいな軽いノリで約束をしました。

その場ではいろんな方を誘ってみんなでご飯しよう、という感じだったんですが、なぜかみんなスケジュールが合わず(笑)。結局、このときの食事が、私たちにとっての初デートになりました。イタリアンのお店に行ったのですが、デートといっても私は当時1歳半の息子と6歳の娘を連れてますから、甘いムードにはなりようがありません。

娘は久々の外食にテンション上がりまくりで、テーブルの周りをぐるぐる回り出す。私はそんな娘を制しつつ、息子に離乳食を食べさせるのに大忙し。そのうちに息子が飽きてぐずり出してしまって。結局その日はゆっくり話をするどころか、デザートにたどり着くことさえできずに解散、ということになりました。

せっかく誘ってくれた彼に申し訳なくて、帰宅してすぐに「デザートも食べられずにごめんなさい」というメールを送りました。そうしたら、次の日から、毎日メールが届くようになったんです。といっても、内容は報告メールです。「おはよう、これからAテレビのBの収録に行ってきます」。夜には「今帰りました。おやすみなさい」。それで私も「これから娘の幼稚園の集まりに行きます」みたいな報告を毎日送るようになって。

あるとき、毎朝10時頃に必ず来ていたメールが来ないことがありました。そうしたら、気になるんですよ、来ないことが。あ、私、彼のメールを待っていたんだ。そっけない内容ですが、彼とつながっていることが私の生活のハリになっていました。

それからは、なんとなく気持ちが近づいて、毎日の報告メールに加えて、たまに外で食事をしたりという感じになりました。でも、人目は気になるし、小さい子どもを連れての外食は落ち着かないし。なので、「じゃあ、うちでご飯食べる?」ということになったのは、ごくごく普通の流れだったと思います。彼がうちに来て、私がつくった料理を4人で食べる、これが彼との過ごし方の定番になりました。

いや、でもこれはちょっと無防備すぎましたね(笑)。あとになってから親しい友達に「家に呼ぶなんて、それはもう恋愛でしょ」と言われて、あ、そうか、そういうことになるのか、と気づくことになるのですが、この時点ではいわゆる恋愛感情はなかったように思います。

というのも、子育てと仕事に追われていた私の“恋愛スイッチ”は、長らく完全にオフ状態。子どもたちは、彼にすっかりなつき、私が食事の後片付けをしている間に彼が寝かしつけてくれるようになりました。彼と共に過ごす時間は心地良くて幸せだった。にもかかわらず、それが恋愛とは結びつかなかったのです。