働きながら介護をする人は、時間的にも体力的にも大きな負担を強いられます。サービスを駆使しながら仕事を続けるか、離職して介護に専念するか……。試行錯誤の先に、それぞれの選択がありました。試行錯誤の先に、それぞれの選択がありました。

 

転院先が見つからないまま、退院の期限が来て
宮本瑞江さんの場合

働きながら介護をしている人は全国に約290万人。そして、1年間に約10万人が介護を理由に仕事をやめているという。両立のための努力や工夫をしつつも、さまざまな問題に直面し、やむをえず離職する人は多い。高齢化が進むいま、その数はこれからも増えると予想され、深刻な事態となっている。

そんななか、仕事と母親(81歳)の介護を両立させているのが宮本瑞江さん(55歳・仮名=以下同)だ。IT関係の企業に勤続25年。6年前に父親をがんで亡くして以来、独身の宮本さんは母親とマンションで二人暮らしをしていた。

母親が突然倒れ、救急病院に運ばれたのが3年前。難病指定の呼吸器疾患で、酸素吸入が手放せない体となった。治療のための長い入院であちこちの機能も衰え、歩けない、しゃべれない、食べられない状態に陥る。6ヵ月後、少し症状がよくなって退院したものの、そのままリハビリ病院に転院。

「そこには3ヵ月しかいられないので、さらなる転院先を探す必要がありました。一時期よりよくなってはいましたが、まだ酸素吸入が必要ですし、口から食事を摂れないので、鼻にチューブを挿入して栄養や水分を補給している状態。なかなか次の病院が見つかりませんでした」

結局、「ここは」という転院先が見つからないまま、退院の期限がやってくる。在宅介護をするしかなくなった。母親は要介護5。宮本さんには仕事がある。会社に行っているあいだ、介護サービスをフルに利用しても、痰の吸引や鼻のチューブから栄養剤を入れるのは、当時、医療関係者以外では家族しか認められておらず、ヘルパーさんには頼めない。

幸い、宮本さんの会社は育児や介護支援に積極的に取り組んでいた。宮本さんの部署でも介護セミナーを開催するなど、仕事との両立を可能にする方法を上司や同僚たちと模索してきたのだ。

「そういったセミナーに積極的に関わっていたこともあり、仕事と介護の両立を実践しなくては、と思ったのです」

上司にも相談し、宮本さんは介護をしながら、在宅勤務をすることになった。週に4日、家で仕事をし、出社は1日でいい。家を空けるその日は、結婚して2人の子どもがいる専業主婦の妹に来てもらい、母親の世話を頼んだ。

「“在宅勤務”なので、日中は家で仕事です。午前9時から夕方5時30分まで介護サービスを受けられるシフトを組んでもらいました。それでも、どうしても母のことは気になってしまうんですけど……」

母親のそばで仕事ができることはありがたい。ところが、そんな日々が続くうち、わけもなく落ち込んだり、イライラしたりすることが多くなった。

「目の前に同僚がいないから、ちょっと確認したいことがあっても聞けない。職場の様子がわからず、把握できないことがたくさん出てきました。そうすると仕事が思うように進まず、以前のように成果が上げられなくなる。フラストレーションがたまっていたんでしょうね。友だちと会ったり、旅行したりする時間もなくなりました。介護はいつまで続くかわかりません。先が見えないんです。体調が悪くても母の介護は休めないし、知らず知らずのうちに追いつめられていたのでしょう」

*総務省 平成24年「就業構造基本調査の結果」より