概要

旬なニュースの当事者を招き、その核心に迫るBS日テレの報道番組「深層NEWS」。(月〜金曜 午後10時から生放送)読売新聞のベテラン記者で、コメンテーターを務める飯塚恵子編集委員と、元キャスターの吉田清久編集委員が、番組では伝えきれなかったニュースの深層に迫る。

香港政府のトップである行政長官に、前政務官の李家超氏が就任した。過去に例のない警察出身の長官就任にはどんな意味があるのか。今後の香港はどこに向かうのか。神田外語大の興梠(こうろぎ)一郎教授と、東京大の阿古智子教授と共に今後を議論した5月5日の放送を踏まえて、編集委員2氏が語り合った。

トップ交代香港の未来は

市民弾圧に豪腕ふるう

「なぜ警察出身の行政長官が出てきたのかといえば、中国政府が香港をまだ『危険な場所』と見ているから。再び民主化運動が盛り上がってきた時、豪腕で封じ込められる『実績』のある人を連れてきたということだ」=興梠氏

「中国政府の李氏に対する評価は高い。コロナ問題などで混乱が起きている中で、治安をしっかり強化することが大切だと考えているのだろう」=阿古氏

吉田この7月に行政長官に就任することになった李家超氏は、警察官出身の「たたき上げ」として知られる人物です。香港政府の保安局長として2019年には反政府デモを鎮圧し、昨年は中国共産党に批判的な香港紙『リンゴ日報』を廃刊に追い込んだ「実績」もある。こうした豪腕ぶりが中国政府に評価され、昨年6月には政府ナンバー2の政務官に就任。さらに今年5月の行政長官選挙で当選し、ついにトップの座に上り詰めたわけです。

次期香港トップは警察出身者©️日本テレビ

飯塚香港の民主主義は死んだ――そう言わざるを得ません。選挙はもともと中国政府に見込まれた人物を選ぶ、いわば「出来レース」でした。習近平国家主席は5月30日、李氏と選挙後初めて北京で会い、「国家を愛し、香港を愛する立場がしっかりしている」と支持を表明。李氏は「国家の負託に背きません」と誓ったとのこと。習氏は、香港は『安定から発展に向けて鍵を握る時期だ』と述べ、混乱は過ぎ去ったとの認識を示しました。まさに偽りの「民主主義」によって人々の声は鎮圧された。憤りを覚えます。

”不可解”?香港選挙の仕組みは©️日本テレビ

吉田1997年の香港返還以降、過去4代の行政長官は財界人や官僚出身者が務めてきました。それだけに今回治安の専門家を押し立ててきたことには、「民主化は絶対許さない」という中国政府の強い意志を感じます。

飯塚中国政府は6月19日、香港政府ナンバー2の政務官に、反体制活動を封じ込める「国家安全維持委員会」秘書長の陳国基氏を充てることを決めました。李、陳両氏は2020年、香港の自治を侵害したとして、米財務省から制裁対象に指定された人物。世界の懸念に挑戦するかのような、あからさまな人事と言えます。