「結婚1年半、23歳で夫が亡くなりました。これまで25回も体にメスを入れているので、家の中にばかりおります。長く立っていることができないので、食事の支度も思うようにならず、買い物にも行けず、なんのために生きているのかと思う時もあります。子どももおらず、身寄りもありません。長生きなんてしたくありませんでした」
食事は1日に2回。朝食は食べず、昼は野菜中心。夜は一度に100個ほど作り置きするという餃子をつまみにビール1杯。ご飯も軽く1杯食べる。
そんな小林さんがいちばん楽しみにしているのは、以前一緒に働いていた職場の年下の友人(60歳)の来訪だ。近くに来ると必ず電話してきて、「買っていくものはないか」と聞いてくれる。家に来れば掃除を手伝ってくれる助っ人でもある。
「楽しい時間ですね。おしゃべりをして、餃子を食べていってくれる。ご主人にも餃子をお土産に渡します。すると“ありがとう、おいしかった”と電話がかかってきて……。友人の存在が生きがいです」
唯一後悔していることがある、と言う小林さん。それは、夫との死別後、再婚しなかったことだ。亡くなった後、実家に戻ったが、ほどなくして実母も死亡。実家には小学生だった弟2人が残された。
「その世話もあり、いくつか結婚話もあったのですが再婚はしませんでした。40、50代でご主人を亡くした方がいたら、絶対に再婚しておくべきだと伝えたい。寂しくないし、二人でいれば経済的にも楽だったと思います。こんな歳ですが、どなたか私をもらってくださる方、いらっしゃらないですか(笑)」
明るく笑う小林さんだが、当時再婚しなかったことへの思いは、切実なのかもしれない。
一方で、家族がいてもかなりの困窮状態にある高齢女性もいる。神奈川県に住む元民生委員の山川いずみさんは、20年来の顔見知りの80代女性のことが気にかかっている。大きな家で息子一家と同居しているが、何十年も前の服を着て、履いているサンダルはボロボロ。その外見から、かつかつの生活がうかがえるという。大きな家のおばあちゃんなのに、なぜ、と首をひねっている。
「たまたま国民年金が振り込まれる日に、開店早々の銀行に入っていくのに出くわしました。聞けば、いち早く年金を受け取って、そこから家族へ食費2万円を渡すと言います。『家族に迷惑をかけたくない』が口癖の彼女にとって、2万円を入れることがせめてもの矜持なのかもしれません」