「決定回避の法則」

「人は選択肢が多すぎると、一つに決めるのが難しくなり、選択すること自体をやめたり満足度が下がったりする傾向がある」ことを、「決定回避の法則」として世に知らしめたのが、行動経済学で有名なコロンビア大学のシーナ・アイエンガー教授らの研究チームです。

’95年、当時まだ学生だった彼女らは「24種類のジャム」と「6種類のジャム」を用意して行なった、試食実験の結果を発表しました。

「人は選択肢が多すぎると、一つに決めるのが難しくなり、選択すること自体をやめたり満足度が下がったりする傾向がある」(写真提供:Photo AC)

このとき、試食した人数は「24種類」のほうが多かったにもかかわらず、購入率は、選択肢が4分の1しかない「6種類」のほうが、なんと10倍も多かった(3%対30%)のです。別名「ジャムの法則(Jam study)」とも呼ばれています(同『選択の科学』文藝春秋)。

こうした傾向は、その後の’04年、アメリカの心理学者でスワースモア大学のバリー・シュワルツ教授によって「選択のパラドックス(The paradox of choice)」とのキーワードで紹介されました。

現代社会では、選択肢が多くなると「自分はこんなことも決められない人間なんだ」と無力感を感じて選ぶのが難しくなり、選んだあとも「ほかにもっとよい選択があったのでは」と後悔が残りやすい。

選択にもより多くの時間がかかるので、「こんなこと(選ぶこと)ではなく、別の有意義なことに時間を費やせばよかった」と感じ、生活や人生そのものの満足度が下がりやすい、ともいいます(同『なぜ選ぶたびに後悔するのか』武田ランダムハウスジャパン)。