選ぶこと自体をやめてしまっている
マーケッターの多くは、この理論に大いに衝撃を受けました。’90年代までは「選択肢が増えるほど、人は幸せを実感しやすい」と考えられており、だからこそ私たちは、意気揚々と数多くの商品やサービスを開発し、世に送り出していたからです。
ところが、シュワルツ教授の学説に基づけば、世の中の商品やサービスの選択肢の幅は、むしろ一定程度に抑えられたほうが、消費者の心理的負担は少なく、かつ幸福度が高いことになります。
そしていま、こうしたジレンマが、婚活市場においても起こっているのではないかと見られているのです。
ニッセイ基礎研究所の研究員(当時)・清水仁志氏も、先の「決定回避(ジャム)の法則」が、婚活のネット型マッチングサービス(マッチングアプリほか)において起こり得る可能性について、同研究所のレポートで報告しています(’21年同「行動経済学から見たネット型マッチングサービスの課題と期待」1月20日掲載)。
つまり、昔(昭和の時代)はお見合いや結婚相談所を通じた出会いなど、数人~数十人の中から相手を選べばよかった。
でもいまはインターネットやマッチングアプリの登場で、「数万人以上いる(候補者の)中から一人を選ばなければならず、選ぶこと自体をやめてしまっている可能性が指摘できる」といいます。
※本稿は、『恋愛結婚の終焉』(光文社)の一部を再編集したものです。
『恋愛結婚の終焉』(著:牛窪恵/光文社)
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