新宿末廣亭の高座にて。最初に切るのは、誰が見てもわかるもの。「今は夏なので『線香花火』、他の時期なら『相合傘』、お正月は『羽根つき』ですね」(撮影:大河内禎)
寄席紙切り・林家正楽さんが第40回浅草芸能大賞の大賞を受賞。2024年の3月16日には浅草公会堂で授賞式と受賞者記念公演が行われる予定です。正楽さんが半生を語った『婦人公論』2023年9月号のインタビューを再配信します。

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客席からお題を受けると、その場で下書きなしに白い紙にハサミを入れていく。そしてものの数分で、一筆書きの見事な切り絵ができあがる――そんな「紙切り」を57年、毎日高座で披露している林家正楽さん。紙切りの魅力とは?(構成=上田恵子 撮影=大河内禎)

50年以上毎日紙切り。全然飽きません

高座の持ち時間は1人15分。最初の1枚は、短い時間で切れて誰でもわかる、いい形のものと決めています。2枚めからはお客さんに注文を出していただくのですが、日によって反応も違えば、出されるお題も違う。

面白いもので、1枚にかける時間が短い時ほどいいものができたりするんです。おかげで50年以上、毎日やっていても全然飽きません。

紙は大きさ含め、好みで選びます。僕が使っているのは模造紙ですが、厚すぎると手が疲れるし、薄すぎるのもハリがなくてダメ。ハサミも同じで、切れすぎると必要以上に切っちゃうから使いづらい。塩梅ですね。

お客さんからの注文は世相を反映しているため、いま流行っているものは週刊誌などで常に確認しています。知らないものは切れないけど、やっぱり「わからない」とは言いたくないですから。

最近の注文だとメジャーリーグの大谷翔平選手、プーチン大統領。ゼレンスキー大統領なんてのもありました。参考になるのはスポーツ新聞。顔写真が大きいでしょ?

〈二刀流の大谷翔平選手〉。「生きて動いているもののほうが切りやすいんです。難しいのは、国会議事堂みたいな建物。形が決まっちゃってるから、修正がきかない」