みんなもっと、妄想していい

スー 20代半ばまではお互いにちょっと張り合いながらカレシの話をして、20代後半くらいから結婚どうする、という話になる。それが30代半ばになると……。

三浦 結婚する人はしてしまい、していない人もひと山越えて、ちょっと足腰が鍛えられてる。(笑)

スー そうそう。友人がワワワッと駆け込みで結婚すると、乗り遅れた感があって。30代後半になると、キャリアとは何か、仕事とは、みたいな話題が増えますね。

三浦 この働き方のままでいいのかとか、しょせん男社会だし、とかね。

スー そして40代になると、65歳までにいくらお金を稼がなくてはいけないかと、そろばんを弾きだす。だって私たちみたいな自由業は、将来もらえる年金が月10万円に満たないかもしれないんですよ。持ち家がなければ家賃もかかる。ある程度余裕のある生活をしたいと思ったら、年金以外に毎月20万必要として、20万×12ヵ月×20年で4800万!

三浦 ギャァーッ!

スー もう、「早めに死ぬしかない!」となりますよね。そんなふうに年齢とともに女友だちと話す内容が変わっていき、最終的に目線が行く先は、どう人生を終えるか。“婚活”を途中で諦めて、“終活”。(笑)

三浦 私も最近、お墓どうしよう、とか考えます。

スー それが現実。だからせめて妄想というか、夢みたいなことを話したい。

三浦 まったく同感です。

スー 『あの家に暮らす四人の女』にも、「夢見たっていいじゃない。年取って死ぬまで、気の合う友だちと楽しく暮らしました。そんなおとぎ話があったっていいはずだ」というくだりがあるけれど、「ですよねぇ」と溜飲を下げました。

三浦 妄想というのは、わが身のことだけではなく、大きく言えば社会全体がこうだったらもっと生きやすいのになぁ、と想像することですよね。それがなかったら、社会は絶対に今よりよくならない。だからみんなもっと、妄想していいと思います。そして、くだらない話もできる友だちって本当に大切です。

スー 小説の4人は、いろいろな偶然が重なって一緒に暮らすことになりますよね。

三浦 はい。学生時代からの友だちというわけではない。大人になって仕事関係などで知り合う人のなかにも、気が合う人はいますから。この小説の登場人物たちは、このままもう少し齢を重ねたら、学生時代からの友だちも巻き込んで、いずれみんなで会うことになると思います。そしてたぶん、老女館を築いていくんでしょう。