スー 半年もしないうちに「結婚というのは人生修業だわ」とため息ついていました。
三浦 アハハハ。
スー 安心したくて結婚したのに、より将来が不安になってきた、と。私も老後は、「おまえの話は長い」「で、結論は?」なんて言わない同性の友人と、気がねなくおしゃべりして暮らす場がほしいですね。
三浦 わかります、その気持ち。
妄想の力は不安も消す?
スー 牧田家の母娘は庭で野菜を作っていますね。私も苗を買ってきてミニトマトを育てているのですが、あれ、永久機関ですよ。どんどんなって、毎朝トマトが食べられる。
三浦 私も野菜作りなんてまったく興味なかったけれど、バジルを育ててみたらちょっと楽しくなりました。年齢とともに趣味嗜好も変わるんでしょうか。そのうち本格的に盆栽始めたりして(笑)。でもそのためには、スペースも必要。
スー 小説の最後のほうで、庭で花火しながらみんなで焼肉するでしょう。なんだか、読んでいて幸せな気持ちになるシーンです。
三浦 そうか、必要なのは庭だ!
スー でも、庭つき一軒家を確保するのは大変。だから、団地なんですよ。敷地内で野菜も育てられますし。新国立競技場の建設計画が白紙に戻って万々歳。以前の計画では隣接する都営住宅が壊されることになっていたけれど、あそこを残して独り身の女性のためのコミュニティーにしたらいい。都心で便利だし、まさに“地上の楽園”ですよ。
三浦 “痴情”ではなくてね(笑)。こうやって話をしているとだんだん楽しくなってきて、老後の不安が消し飛びそう。
スー 三浦さんの小説も、そんな気にしてくれる。それこそ妄想の力だし、小説の力だと思います。
※この対談は、2015年7月23日にSTORY STORY新宿店で行われた、「『あの家に暮らす四人の女』刊行記念 三浦しをん×ジェーン・スー トークショー」をもとに再構成したものです