1時間かけて厳選した木箱

うちに戻ると、2匹の兄弟猫が「おかえり~」と玄関にタタタッとかけてきた。「あんたたちはさっきも可愛かったけど、今も可愛いねえ」と、声をかけると、足元に擦り寄って離れない。ごはんだごはんだ、と言うので、太り過ぎだよ猫が太るとなかなか痩せられないのだから困りましたよ、と言いながら、少しだけ、オヤツをあげる。

あっという間に寒くなった。

わたしと娘がいない時も床暖房をつけているが、寒くないように無印良品で箱を買い、猫のベッドを作ってあげた。どの箱がいいかバスケットがいいか、迷いに迷って、久しぶりに1時間は無印良品にいた。これがいいか、あれがいいか、バスケットだと爪で研ぐからゴミが出るからな、と、ぶつぶつ唱えながら。おかげさまでヤバめの中年だと思っていただけたのか誰も近づいてこないので、ゆっくりと買い物を楽しめた。

厳選した木箱に、ふかふかの布団を敷いてリビングに置いてみたところ、猫は見向きもしなかった。

リビングに放置されている箱。クティはしらんぷり
青木さんの連載「50歳、おんな、今日のところは「●●」として」一覧

●2023年11月26日(日)まで、東京・本多劇場で上演される舞台『リムジン』に出演予定

STORY

小さな田舎町で、親から受け継いだ小さな工場を営む主人公の男(向井理)。彼は町の実力者に気に入られ、自分の後継者にと、推薦されていた。その地位につけば、名誉と、特別な待遇が与えられる。妻(水川あさみ)と共に喜ぶ男。しかし、喜びも束の間、彼は誤って、昇進に尽力してくれた 恩人に怪我を負わせてしまう。「一言謝れば済む話よ」と、ためらう夫に妻は言うが、掴みかけた未来が遠のくことに耐え切れずついた嘘が次の嘘を呼び、夫婦は取り返しのつかない事態を招いてしまう。重ねた罪に比べて実入りの少ない、あまりに非効率な夫婦の悲喜劇。