家ではスイッチオフなのでありがたい

12年にユニフォームを脱いでからの10年間は、野球評論家や試合の解説者として時折呼んでいただいたりしていましたが、さすがにコロナ下の3年間はほぼ家にいましたね。長く一緒にいたのは、怪我の時以来じゃないかしら。

一緒に野球中継を観ると、面白いんですよ。夫が「このピッチャーは5回までだな」と言うと、本当にその通りになる。私もずっと試合は観てきましたけど、野球は奥が深くてわからないことばかりです。夫は長年の経験でわかるのでしょう。

細かいところまで選手を観察する監督として知られていますので、一緒に暮らすのは大変じゃないですか?とよく聞かれます。でも、私には文句はいっさい言いません。これまで言われたことで覚えているのは、「おまえ、スカート透けてんぞ」ぐらい(笑)。ありがたいことに、家ではスイッチをオフにしてくれているようです。

ただ試合後にブツブツ言っているのを聞くと、「うわ、そんなところまで見てるの!部下じゃなくてよかった……」と思います。

お互いゴルフはするけど、一緒に回ると夫の気合いが入らないのか、それぞれお友達と行くことが多いですし、趣味では接点がない夫婦です。そういう意味では、野球が私たちの共通の話題になってくれています。

最近は孫たちの「じいじ」としても奮闘中。今年のゴールデンウィークには、息子、孫と野球をしました。「オレはボールを投げるのが上手いんだ」という言葉通り、バットを持つ孫が気持ちよく打てるボールを投げるものだから、孫には自信になったようです。

野球に関わる仕事には定年がないし、先輩方を見ていると90歳を超えても解説をなさったりしているので、これからも変わらずこのままいくのではないでしょうか。日本シリーズが終われば、少しゆっくりできますかね。

仕事が落ち着いてもう少し家にいるようになったら、何か役割を持って、小さな家事から参加してもらうつもりです。よくわが家に集まる友人にも言うんです。「家事が何もできない夫だと、妻は心配で入院もできないよね」って。

私たち夫婦はお昼に市販の野菜ジュースを飲むのですが、最近、それを夫がガレージにある箱から出してくる、という習慣ができました。気づかれないように少しずつ参加してもらう戦略を、今後も立てていきたいです。(笑)

※この記事は10月16日に取材したものです。

 


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