娘と楽しみを共有したくて

娘の勉強への協力は惜しまない。生薬のテストの際には、娘の代わりに単語帳を作成した。それにも娘は驚かない。「ママも好きだよね。遠慮なく使わせていただきます」と、活用しているのだという。

吉沢さん自身の母親もそうだった。中高生になってからも、勉強していると傍らにやってきて、解答を片手に丸付けを手伝ってくれたのだ。そんな様子を話してきたからか、娘たちは「私たちに子どもが生まれたら、ママはきっと孫に勉強教えるよね」と笑う。

「子離れしなきゃいけないとは思っているのですが、授業料を払っている間は、親の監督下にあると思うのです。彼氏がいる下の娘には“最近デートしてないね”と聞くこともありますが、特に嫌がっているようにも思えません」

そんな吉沢さんを見て、周囲のママ友の中には「考えられない」「よくやるわね」という人もいる。一方、息子を持つ母親からは、「羨ましいわ。男の子は拒絶するし、関わりたくてもそうはいかない」といわれる。

「娘たちにしてみれば、私は“友だちの一人”のようでもあり、何かと役に立つ“財布代わり”のような存在でもあるのでしょう」

しかし母にとって娘は「癒やし」。娘と一緒に楽しみを共有したいだけ、と話すが、「娘に依存しているかもしれない」という思いもある。

「夫が会社人間で忙しい人だったので、子育ては私が一人でしてきて、どうしても母子密着になってしまいました。私自身、友人と遊びにも出かけ、娘たちを置いて夫と旅行にも行きますが、やはり娘と楽しむのは格別なのです」

娘たちが一人で生きていけるように厳しく育てた。学校選びや就職活動での最終選択も自分で決断できるまでに成長したのに、吉沢さんが子離れできない。根底には、母である以上、死ぬまで母親、という思いがあるからだ。

「私がお墓に入ったって、娘たちが墓に向かって呼びかける言葉は“お母さん”ですよ。娘に言っているのは、“死んだってあなたたちの母親。あなたたちの後ろにいて、何か悪いことをすれば怒るからね”ということ。そんな私にとって卒母なんて、遠いことですね」

干渉したがる母と、それを嫌がらない娘。この関係は永遠に続くのだろうか。

〈後編につづく