イラスト:かやぬま優
2023年度(1月~12月)に反響の大きかった記事ベスト10をお届けします。第9位は慶應義塾大学医学部 百寿総合研究センターの新井康通先生が”ピンピン長生きの秘訣”に迫った記事でした(初公開日:2023年06月29日)。

*******厚生労働省のデータによれば、2022年9月1日時点で100歳を超えた人は全国で9万526人(そのうち89%は女性)、52年連続で過去最多を更新中です。30年以上にわたる高齢者調査で見えてきた、人生の最後まで自立した生活を送るためのカギとは(構成=山田真理 イラスト=かやぬま優)

健康寿命を延ばす3つのカギ

私が所属する慶應義塾大学医学部百寿総合研究センターでは、超高齢者(85歳以上)、百寿者(100歳以上)、超百寿者(105歳以上)、スーパーセンチナリアン(110歳以上)の寿命と健康の関係について研究を続けてきました。人生の最後までイキイキと、心身ともに自立した生活を送ることは多くの人の理想。

そこで私たちは、長寿でありさえすればよいという観点ではなく、健康寿命をいかに延ばしていくかという視点で、医学、社会心理学、看護学、栄養学など、さまざまな側面から調査を実施しています。

そのなかで明らかになったのは、85歳以上の超高齢者のうち、移動、着替え、食事、入浴などの日常生活動作を「自立」「ほぼ自立」して行えている人は約半数であるということ。百寿者ともなれば、その割合は約2割になってしまう。ただし、100歳の時点で自立している人は、その後も長生きだということでした。

いつまでも自立した生活が送れている高齢者には、どんな特徴があるのか。調査結果から私たちが導き出したのは、以下の3つです。

 

(1)心臓や血管など循環器系の老化が遅い

加齢にともなう心機能や血管の弾力性の低下は避けられないものの、百寿者の多くは、ほかの高齢者より血管の状態がよく、心機能も良好に保たれていることがわかっています。

また、スーパーセンチナリアンは心不全の診断指標となる血液中のホルモン「NT‐proBNP」の血中濃度が、100歳時点でほかの百寿者よりも低く抑えられていました。

「NT‐proBNP」は心臓のポンプ機能が低下するほど多く分泌されるため、自立して長生きしている人ほど心臓の老化が緩やかだといえるでしょう。