樋口恵子さん(撮影:「婦人公論.jp」編集部)
評論家として活躍し、女性たちの声を集めて政策を提言する活動を続けてきた樋口恵子さん。介護保険制度の設立に大きな役割を果たしたため「介護保険の母」とも呼ばれます。その名を冠した樋口恵子賞の2回目となる授賞式が2023年12月2日に開かれました。樋口さんや選考委員のスピーチとともに、受賞した各団体の活動を紹介します。(構成:「婦人公論.jp」編集部)

「足を引っ張るより、手を引っ張り合おう」
樋口恵子さん

91歳の樋口恵子さんが登壇。着席しての挨拶に「ヨタヘロぶりを皆様にお見せして同情を買おうとしております」と、まずは会場を笑わせます。

これまでの自身の活動を表彰された際に受け取ってきた賞金を社会に還元しよう。そう樋口さんが考え、主催するNPO法人「高齢社会をよくする女性の会」の仲間と相談のうえ、「樋口恵子賞」を立ち上げたのは2022年のことです。

「私はもともとこういう世界で生きる人間にしては自己主張が強くないほうだと自己分析しておりましたので(笑)、樋口恵子賞という名前の賞を作ろうと周囲から言っていただいた時には、ご遠慮いたしました。

でも、最近の世の中は謙譲の美徳が発達しすぎたのか、いいことをしている人のことが世間に知られない。変な言い方ですけれども、コソコソといいことをする、そんな風潮は少しおかしいんじゃないかと思っております。

堂々といいことをする。そして、他人のファインプレーに『やったね!』と拍手を送る。そういう雰囲気がもっとあっていいんじゃないかと」

その「拍手」が、この樋口恵子賞というわけです。

2000年に介護保険制度ができる以前に各都道府県で行われていた「介護嫁表彰」にも言及した樋口さん。介護を頑張っていることで表彰を受ける女性が美容院に行き、夫が仕立ててくれた新しい着物で表彰式に向かうとき、ご近所に陰口をたたかれることも多かったそうです。

「それはちょっとおかしいんじゃないか。どうしてちょっといいことをすると足を引っ張られるのでしょう。足を引っ張らずに手を引っ張り合う。そんな助け合いのできる社会にしていこうじゃありませんか」

と、元気な檄を飛ばしました。

最後には、選考委員やスタッフへの謝辞とともに、「私ごときの名前のついた賞をお受けくださいまして(笑)、心よりお礼申し上げます」と受賞者へ感謝の意を表した樋口さん。会場はあたたかい笑いと拍手に包まれました。