また、生ものの保存のために自然と発酵食を作るようになりました。梅干し。味噌。そしてぬか漬け。余った野菜はもちろん、こんにゃくから厚揚げまであらゆるものをぬか床に埋めてしまいます。ぬか漬けはサラダに入れたり、厚揚げと炒めたりするのもお勧めで、ちょっとチーズみたいな味になる。
ただし、ぬか漬けがうまくできるのは暑い時期のみ。気温が低い冬は発酵がうまく進まないので、冬の漬物といえば白菜漬けってことになるわけです。本当に昔の人の暮らしはよくできていると関心しきり。
こうして発酵食品を常食するようになったら、腸は健康そのもの、体調も絶好調。しかも体重は非常に安定しています。「我慢して食べない」ダイエットにチャレンジしていた過去の私に教えてあげたいです。
冷蔵庫は欲を溜め込む装置だった
この食生活なら調理は10分、材料費は1食200円程度。月にしたら2万円くらいです。老後の不安というとお金と健康だと思うんですが、その二つの心配がなくなった。いわば最強の暮らしです。
しかもこんな「超地味メシ」を始めてから、走って家に帰りたくなるくらい毎日の食事が楽しみ。昔の日本人にとって当たり前の食生活が、どれだけ完成されたものなのかを思い知りました。というか、家庭料理ってそもそもこういう、地味で代わり映えのしないものなんじゃないでしょうか。地味でおいしすぎないからこそ、毎日同じでも飽きない。
よく聞かれるのが、「時々ご馳走を食べたいとか思わないんですか?」。はい、かつての私はあれこれとレシピ本を買いまくって料理をするのも、おいしいものを食べにいくのも大好きでした。でもこういう食生活を始めてみて思うのは、「おいしい」って何なのかということ。グルメ情報を集めて一生懸命食べ歩いていた時代を思い返すと、あれは実は情報を食べて喜んでいたんじゃないかと。それが証拠に、たとえ評判の絶品イタリアンでも2日続けては食べたくないですよね。
本当においしいっていうのはやっぱり、毎日食べても飽きないもの、そして体に余計な負担がかからないものなんじゃないか。若い頃はともかく、人生の後半戦は、そういう自分なりの「おいしさ」を発見する時期なんじゃないでしょうか。