母・絢子さんが愛用していた和装類と桐の箪笥は大切にしている

住み慣れた家で最期まで暮らしたい

兄の骨折に床下の大工事と、災難続きでパニックになりかけましたけれど、今年でよかった─。ちょうど今年の春頃、拙著『婚活食堂』がドラマ化されて本の売り上げもあった時期だったので修繕代金も払うことができました。仕事のありがたさを感じます。

私の座右の銘は、「恒産なきものは恒心なし」。孟子の言葉です。現代風に言えば、安定した仕事や財産がないと正しい心を持つことができないという意味。現在はそれなりに収入を得ているから、要介護5の兄を抱えていても、家のトラブルが発生しても悲観せずにいられる。いまの境遇に感謝しています。

本来は出不精で、学生時代もまったく旅行などしなかったのに、作家になってからは全国を飛び回っているのもうれしい変化。仕事とはいえ、兄と離れ、東京を離れ、いろんな場所を訪れるのは、私にとってはいい気分転換になっています。

でもね、帰宅するとホッとするんです。やっぱりうちがいちばん居心地いい。(笑)

私には子どもがいないので、要介護になったらどうするか、という問題はあります。でも、在宅医療を実践している医師の小笠原文雄先生がお書きになった『なんとめでたいご臨終』を読んで、希望が持てました。

要介護度が上がると、使える介護サービスが増えます。それを駆使して定期的にヘルパーさん、訪問医の先生、看護師さんに来てもらえば、家族がいなくても、1人暮らしでも、住み慣れた家で最期を迎えることができますよ、ということが書かれていたのです。なるほど、私もそうしよう、と。